メトロ新体制で「地下鉄一体化」は実現するか 新社長が乗り継ぎ「運賃通算化」に意欲

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これを解決する方策の一つが、両者の路線を乗り継いだ場合でも運賃をどちらか一方の制度で計算する「運賃通算制度」だ。2011年に開かれた、第4回「東京の地下鉄の一元化等に関する協議会」の資料でも触れられており、ここでは両者を乗り継ぐ場合、メトロの区間も含めて都営地下鉄の運賃制度を適用する方法が挙げられている。

たとえば東京メトロ銀座線と都営大江戸線を乗り継いで渋谷―六本木間(計4キロメートル)を移動する場合の運賃は、現在の制度だと銀座線165円+大江戸線174円の合算額から70円を割り引いた269円。これを都営地下鉄の運賃制度で通算すると、メトロ単独の場合よりは若干高いものの、174円で済むことになる。これはあくまで方策の一つで、協議会の資料では乗り継ぎ割引の拡大も例として取り上げられている。

まずはサービスの一体化

運賃制度に関する議論の現状は「サービス一体化の一環としてメトロと都の担当者間で勉強会を行い、意見交換している状態」(東京メトロ)、「特にいつまでに決めるということではなく、サービス改善についての勉強会を行っている」(東京都)段階だという。

乗り継ぎ運賃についての改善に進展の気配が見えてきた一方、運営そのものの一元化に関しては進展はないようだ。

現在行っているという意見交換や勉強会について、メトロはあくまで「サービスの一体化と改善に向けた協議を進めているというスタンス」。猪瀬直樹都知事時代には運営の一元化を積極的に主張していた都も「(運営一元化は)さまざまな課題があるため、今はサービスの一体化と改善を進めていくという段階」と説明する。利用者にとっては、運営が別でもサービス面の一体化が進めばメリットは大きく、まずは歓迎すべき流れといえるだろう。

今回の件について、関係者からは「あくまでサービスの改善に向けた意見交換で、運賃通算化の話が一人歩きしている面も……」との声も聞こえる。運賃の通算化は減収を伴うため、具体化には難航も予想される。

だが、東京メトロのトップが乗り継ぎ運賃の改善に意欲を示した点は大きい。東京の地下鉄建設に営団以外の参入を認めるよう提言した、1956年の「都市交通審議会答申第1号」は、営団以外の地下鉄が建設された場合「あたかも同一経営主体の地下高速鉄道を利用する場合と同様に取扱を行いうる制度を実施すべきである」としている。

2度目の東京オリンピック開催時、2つの地下鉄は「あたかも同一経営主体の地下鉄」を利用するようなスムーズな移動手段となっているだろうか。

小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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