たった23議席!自民党「歴史的大敗」の衝撃 安倍首相は深刻な危機にどう対応するのか

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「自民党がまいた種の部分もある。私自身も選挙期間中、週刊誌に政治資金問題を書かれた。これは選挙妨害だ。すぐさま会見して説明したが、いったん書かれてしまうと不利な部分が多々あった。残念だ」(下村氏)

苦し紛れにしか聞こえない言い訳もあった。「小池(百合子)知事はこれから相当の責任を負う。築地と豊洲の2つの市場を使い、税金を投入しないと言っているが、本当か。5年後に築地に戻るというのは、可能なのか。そうしたことの議論が選挙では深まらなかった。都民の負担になりかねない」。

確かにこうした都政の問題は、あまり争点にならなかった。代わって争点になったのは、森友学園問題や加計学園問題など国政の問題だ。とりわけ稲田朋美防衛大臣が都議選で「防衛省・自衛隊、防衛大臣、自民党としてお願いしたい」と発言した問題については、「A級戦犯だ」との批判が自民党内で噴出している。

そのあおりをくってか、高木啓都議会自民党幹事長や川井重勇都議会議長ら重鎮が相次いで落選した。高木氏は公明党が自民党と絶縁した原因をつくった“戦犯”で、川井氏は就任したばかりの小池知事に握手を拒否したことが話題となった。いずれも小池知事と対立したことが選挙で足かせとなったようだ。

都民ファーストの会は圧勝

さて小池都知事だが、すべてはその思いどおりになったといえる。「樋口君は大学時代に私の事務所でインターンをしてくれた。彼が当選して本当にうれしく、母のような気持ちだ」。午後8時のゼロ打ちで都民ファーストの会は30人余りの当選を決めたが、中でも最も印象的な選挙区として、小池知事は樋口高顕氏が当選した千代田区を挙げた。

千代田区は小池知事の宿敵であるドン・内田茂氏の地元。小池知事は2月の区長選では石川雅己区長を応援して1万6371票を得させ、内田氏らが擁立する与謝野信氏をトリプルスコア以上の差で下している。

これに対して自民党は小池知事の希望の塾の元塾生の中村彩氏を擁立し、区長選で健闘した五十嵐朝青氏も巻き込んだ。それでもダブルスコアで樋口氏が圧勝した。

そして地元の豊島区だ。小池知事は昨年7月の知事選で自分を応援しなかった堀宏道氏をなんとしても落選させたかった。そのために都民ファーストの会から“7人の侍”のひとりである本橋弘隆氏を擁立した。結果は本橋氏の他、共産党の米倉春奈氏、公明党の長橋桂一氏が当選し、堀氏は落選した。

最終的に都民ファーストの会は50人を擁立して49人が当選、追加公認を含めて55議席を獲得。第一党に躍り出るとともに、協力勢力を79まで広げることに成功している。

この快進撃の主因は、都民ファーストの会が安倍晋三政権への批判の受け皿となったことだ。そしてもうひとつの受け皿となったのが、共産党だったといえる。

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