原発大国フランスを覆う電力開発のジレンマ

断トツのドイツ フランスは出遅れ

特に著しい伸びを示しているのが風力発電。発電量は06年末の1567メガワットから07年末には2454メガワットと一気に約57%増加した。政府はさらに、15年までに1万7000メガワットへ拡大させる計画。それとは別に、エコロジー・エネルギー・持続可能な国土開発整備省担当者らが07年暮れに大臣宛てで提出した報告書には、20年までに陸上風力1万9000メガワット、洋上風力6000メガワットで計2万5000メガワットという“野心的”な目標も明記されている。

電力大手、フランス電力(EDF)の再生可能エネルギー関連の子会社、EDF・エネルジー・ヌーベルのパリ・ムラトグルー代表取締役によれば、風力発電の買い取り価格は欧州全体の平均で1キロワット時当たり8・5ユーロセント。これに対して市場価格は同6・8ユーロセントと、原油価格上昇を映して価格差は縮小している。「風力発電はフィード・イン・タリフのおかげで収益性があるばかりでなく、価格競争力もついてきた」とムラトグルー氏は話す。

太陽光エネルギーの電力導入量も07年には30メガワット増えて73メガワットに達した。「現在は(自社の)投資額全体の9割が風力発電関連向けだが、2年後には風力と太陽光の割合が半々になるだろう」(同氏)。太陽光発電市場の潜在成長力の大きさに対する関連業界の期待が膨らむ。

ただ、欧州全体で見ると、再生可能エネルギー分野のトップランナーは断然ドイツだ。風力発電の導入量は07年時点で2万2247メガワットとフランスの約9倍。太陽光発電では世界各国の導入量の半分をドイツ一国が占める(06年末)。一方、後塵を拝する形のフランスでは、風力発電が飛躍的な伸びを記録しているとはいうものの、EU加盟27カ国中で5位にとどまっている。

ドイツがリード役に躍り出たのは、他国に先駆けて00年にフィード・イン・タリフ採用に踏み切ったことが大きい。これに対し、出遅れぎみのフランスだが、スタートダッシュに失敗したのにはワケがある。

それは、フランスではCO2を排出しない原子力発電のシェアが圧倒的に高いことだ。フランスは世界でも指折りの原子力大国。「原子力なしの地球温暖化問題への挑戦は幻想」というのがサルコジ大統領の考えだ。08年初の段階で運転中の原子力発電所の数は59基と、米国に次ぐ2番手に位置する。

電源構成では原子力が全体の80%程度で、次いで水力が10%台前半。残りは水力以外の再生可能エネルギーや石炭などが占めている。

原子力が主力電源になったきっかけは1973年の第一次石油危機。資源小国のフランスは50~70年代にかけて、水力発電所建設を積極的に推進。開発余地が徐々に乏しくなり始めていたところへ、石油危機に伴う原油高が直撃した。これを受けて政府は、燃料ウランの採掘可能な鉱山が当時国内に存在していたことなどに着目、原子力推進へ舵を切った。現在運転中の原発の大半は77~99年にかけて建設されたものだ。


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