原発大国フランスを覆う電力開発のジレンマ


一方で原発回帰の動き 20%目標の達成は…

むろん国内には、廃棄物の処分などをめぐって安全面への懸念は存在する。7月には放射性物質漏れなどの事故も相次いで、信頼性を揺るがした。ただその一方で、原発利用に軸足を置いたことで、欧州諸国に比べ割安といわれる電力料金など、消費者が低コストの恩恵に浴しているとの認識が浸透しているのも事実。

三菱重工業とも連携を進める原子炉メーカー、アレバのアースル・モンタランベール・国際マーケティング担当副部長は「ウラン価格は高騰しているが、1キロワット時当たりの発電コストに占める燃料費の割合は約5%程度。石炭の値上がりに伴う火力発電のコスト増などに比べれば無視できる水準」と説明する。

資源エネルギー庁の「エネルギー白書2008」によると、1キロワット時当たりの発電コストは石炭火力の5~6・5円に対して、原子力は4・8~6・2円。太陽光(46円)や風力(10~14円)の発電コストを大幅に下回る。

「イギリスは原子力開発を手掛ける方向にある。原発を放棄したイタリアでも見直し論が出ている」。在日フランス大使館のピエール・イヴ・コルディエ原子力参事官は欧州での原発回帰の動きに言及する。

原油など資源価格急騰に伴うコスト競争力向上に加え、温暖化対策の切り札としても注目される原発。世界中で多くの建設計画が進み、「原発ルネサンス」の様相を呈する。牽引役フランスのエネルギー政策が耳目を集めるのは自然の成り行きだ。

「最初にフィード・イン・タリフを導入したドイツと同じように、原子力振興に傾注するフランスも当初は奇異の目で見られたが、今や抜きん出た存在になった」(井上真壮・日本総研主任研究員)。フランス国内では1630メガワット規模の第3世代型原子炉建設も進む。これ1基で100万を超える世帯の電力需要がカバーできる。こうした状況で、「20年までに再生可能エネルギーを20%以上にするのは厳しい課題」(大西健一・海外電力調査会研究員)だ。

フランスへの海外企業誘致に取り組む対仏投資庁のフィリップ・ファーブル長官は「(同エネルギー)開発に乗り遅れたからこそ、外国企業に大きな役割を果たしてもらうチャンスが生まれた」と期待する。ただ、裏を返せば、現状は海外勢頼みの側面も否めない。サヴォワ県の関係者からも「ドイツ企業などの進出が多い」との声が漏れる。そこに“原発大国”の苦悩が見え隠れする。

(松崎泰弘 =週刊東洋経済)

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