「ゆるキャラ」頼みの地方創生には限界がある 100万円使う前に、町の価値を見出せているか

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なお、市営のアーカイブには専門知識をもった専門家が公務員として働いている。日本のように、公務員が数年で人事異動をおこなう「ジェネラリスト」志向の組織ではアーカイブの健全運営は難しいだろう(参考:ドイツの公務員は「人事異動」がほとんどない)。私が暮らしているバイエルン州エアランゲン市のアーカイブの所長も、博士号を持った専門家で、著書も多く、地元紙では町の歴史を紹介する記事などで頻繁に登場する。

では、アーカイブに保管されている膨大な資料は、いったい何に活用されているのだろうか。

まず、町の事典などの出版物を作るのに使われている。2000年前後は、町政900年、1000年といった節目の年を迎えた自治体が多く、その際に町の事典などを作る自治体が少なくなかった。バイエルン州にある人口10万人ほどの都市、エアランゲン市でも、2002年に1000年の記念年を迎え、総ページ数800ページにもなる町の事典が作られた。あくまで記念品で、町の図書館でホコリをかぶっているだけではないか、と思うかもしれないが、そうではなかった。街の書店にはこの事典が平積みされており、日本円にして約6000円もするのに半年で7500部が売れた。

さらに、地元の博物館やアーカイブが開催する展覧会に活用されることもある。エアランゲン市では、町の昔を知る前市長が、在職当時の地元紙記者や経営者たちと当時の町の様子を振り返るトークイベントを行うこともある。

町の「負の歴史」も直視

市営アーカイブで行われた小さな展覧会。所長のアンドレアス・ヤコブ博士が解説している(エアランゲン市)(筆者撮影)

こうした地域のアーカイブは、人の目を引く華やかさこそないものの、地域にどっしり根を下ろし、地域のプロファイルを管理し、活用する要なのである。

収蔵物という「モノ」を保存・管理する目的は、都市の生活の記憶、地域の歴史を蓄積し、町の過去に何があったかを解明するための材料を残すことにある。すなわち、数百年間にわたって収集された収蔵物は「町の物語」そのものであり、歴史的アイデンティティを保証する。自治体のDNAと表現してもよいかもしれない。

エアランゲン市の前市長と元市長によるアーカイブでの対談。アーカイブは、負の記憶も含めて町の歴史を刻み込む(筆者撮影)

もちろんその中には、魔女狩りなどの「負の歴史」もある。しかし、それも含めて廃棄せずに残している。

それから、言うまでもなく過去の出来事の背景にある制度や常識は現在と異なる。ただ、100年たっても、500年たっても人間は同じことを繰り返すこともある。つまり歴史の大きな流れをつかむことで、そこから重要な判断や議論ができる可能性がある。言い換えれば、現代人は歴史の評価・解釈を通して未来を考えることができるかもしれないのだ。

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