行き場を失う、横浜市の放射能汚染焼却灰 市長選を前に、住民や港湾業者が“異議申し立て”

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こうした中で、11年5月下旬にはセメント会社が汚泥焼却灰の引き取りを拒否。やむなく横浜市は、専門家による安全性評価を踏まえたうえで海面の廃棄物処分場への埋め立てに踏み切ろうとしたが、突然の話に周辺住民や処分場の跡地利用を予定していた港湾業者が猛反発。林文子市長が謝罪するに及んで、埋め立て計画は公表からわずか5日でとん挫した。11年9月14日のことだ。

以来、焼却灰の埋め立ては「凍結状態」(小浜一好・横浜市環境創造局下水道施設部長)が続き、行き場を失った焼却灰がコンテナ保管の形で増え続ける形になっている。

焼却灰を袋詰めする作業は、完全防護の装備が必要(南部汚泥資源化センター)

凍結宣言から2年近くが経過した今年8月6日、汚泥焼却灰の埋め立てに反対してきた港湾業者や地元町内会、市民グループ、漁協支部などが一堂に会して「港の安全を守る連携懇談会」を発足。25日の横浜市長選挙を目前に、「関係者一同を集めた検討会の開催」などを求めて行動していく方針を決めた。

住民や港湾業者団体、市民グループが反対姿勢を貫くのにはそれぞれ理由があるが、ともに問題として挙げているのが「8000ベクレル以下であれば埋め立て自体に問題はない、とする市の姿勢」(大谷賢治・ハマの海を想う会政策部長)だ。

東日本各地の下水汚泥から高濃度の放射性物質が検出されたことを受けて国が11年6月16日に示した「考え方」では、放射性セシウムの濃度が1キログラム当たり8000ベクレル以下の汚泥焼却灰を埋め立て処分したうえで跡地利用する場合には、個別に安全性を評価したうえで、長期的な管理の方針を検討していればよしとされた。この考え方は放射性物質汚染対処特別措置法が全面施行された12年1月以降も変わっておらず、横浜市の処分方針も国の考え方を踏まえたものだ。

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