鉄道自殺は、「AIの目」で防ぐことができるか 自殺者特有の心理学的行動を駅カメラが監視

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アースアイズ社のAI搭載監視カメラ(筆者撮影)

同社によると、AIの進歩によってカメラ単体でこのようなことが可能になったのは、ここ1〜2年のことだ。これまでは重なった人物の前後関係を検出することが難しく、「従来のカメラにはできなかった」と山内さんは言う。

「いちばん大事なのは、カメラが人を見失わないことです。ホームは人の動きが激しい場所ですが、正確に把握することはできる。それが第一段階」と山内さん。

一方で、導入を検討する鉄道会社からの要望に対しては、まだ課題もあるという。「問題はその次のステップで、覚悟して自殺、列車に飛び込む直前の人です。直前にどういう行動があるのか、まだわからないのです」という。

鉄道自殺を防ぐ切り札になるか?

「より精度を高くするために、(自殺の)直前の悩んでいる様子などの映像があれば見せてくださいと鉄道会社にお願いしていますが、まだ見せられないと言われています。なんとかしたいですね」と山内さんはいう。

現在のシステムについて山内さんは「他社とはまったく(技術の)前提が違う」としつつ、理想に対しての完成度は「2割もないのではないか」と話す。それでも、鉄道自殺対策にAIが導入されれば「もう少し様子を見てから声をかけよう」という人間特有のロスがなくなり、初動が迅速になるのは明らかだ。

同社によると、カメラ1台の価格は鉄道用で本体9万8000円からを予定しているといい、ホーム1つごとに複数台を設置したとしても、数億円かかると言われるホームドアよりはるかに低コストで自殺対策ができることになる。すでに複数の鉄道会社からオファーが来ているというが、路線名や駅名は非公開だ。

カメラとAIというテクノロジーによる自殺対策は、相次ぐ鉄道自殺を防ぐ新たな切り札になるか。今後の展開と技術のさらなる進化が期待される。

佐藤 裕一 ジャーナリスト(日本不審者情報センター)

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さとう ゆういち / Yuichi Sato

1975年生まれ。慶應義塾大学文学部卒。取材テーマは鉄道人身事故と若者の過労死問題。2016年に日本不審者情報センター合同会社を設立。著書に『鉄道人身事故データブック2002-2009』。

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