「性犯罪厳罰化」の刑法改正案が衆院で可決 親告罪規定を削除、110年ぶりの大幅改正

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 6月8日、性犯罪を厳罰化する刑法改正案が衆院本会議で可決された。2016年7月撮影(2017年 ロイター/Toru Hanai)

[東京 8日 ロイター] - 性犯罪を厳罰化する刑法改正案が8日、衆院本会議で可決された。法定刑の下限が引き上げられ、被害者の告訴がなくても起訴できるようにするなど、明治時代の法制定以来、110年ぶりの大幅改定となる。

参院に送付され、政府・与党は18日の会期末までの成立を目指すが、参院では組織犯罪処罰法改正案(共謀罪法案)をめぐり与野党が対立しており、審議入りが遅れる可能性がある。

改正案は、1)強姦罪を「強制性交等罪」と改め、被害者に男性も含める、2)法定刑の下限を懲役3年から懲役5年に引き上げる、3)被害者の告訴が必要な親告罪の規定を削除し、告訴を不要とする──などが柱。  

また、犯罪の成立にはこれまで通り暴行や脅迫が必要だが、改正案では、親などの「監護者」が、支配的な立場を利用して18歳未満の子どもと性交したり、わいせつ行為を行った場合、暴行や脅迫がなくても成立する、としている。

内閣府の調査(2014年)によると、異性から無理やり性交された経験があった女性のうち、被害について「どこ(だれ)にも相談しなかった」人は67.5%と7割近い。一方、警察に相談した人は4.3%にとどまる。

法改正を求めてきた市民団体は「被害者が訴えにくいのは、暴行脅迫要件などの、性犯罪と認定されるハードルがあまりにも高いから」と指摘している。

改正案が衆院法務委員会で可決された7日、同委員会終了後に「性暴力と刑法を考える当事者の会」など市民団体のメンバー約20人が金田勝年法相と面会し、インターネットで集めた約3万人分の署名と、さらなる法改正を求める要望書を手渡した。

この問題に詳しい太田啓子弁護士は、今回の法改正案について「必要だし、するべきだが遅すぎた」としている。ロイターの取材に同氏は「改正すべき内容の一部に過ぎないため、今後もさらなる改正について議論が必要」と語った。

具体的には、暴行脅迫要件の撤廃が「監護者」にとどまっている点を指摘、教育現場で教師やスポーツのコーチによる犯罪が非常に多く、これらがカバーされない点が問題だとしている。

太田氏は、審議手続きについても、先に提出された刑法改正案を共謀罪法案より先に審議すべきだったのに、共謀罪法案成立のために刑法改正案の審議を「いわば人質にとって」共謀罪審議を早く終わらせようとしたと批判している。

(宮崎亜巳、Linda Sieg)

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