金価格はあと15%ほど上昇する可能性がある

「トランプリスク」だけが強気の材料じゃない

一方、COMEX(NY商品取引所)の金先物市場での大口投機筋のポジションは、5月23日時点で15万9767枚の買い越しとなり、前週から3万2043枚増加した。買いポジションが2万0220枚の大幅増となった一方、売りポジションが1万2823枚の大幅減となった。金相場の底打ち機運を背景に、投機筋による新規の買いポジションが積み増された一方、売りポジションが買い戻されており、目先の底値を確認する動きにある。このような動きが見られるうちは、下値はかなり堅いといえそうである。

以上のような材料から、金市場を取り巻く環境は依然としてポジティブであり、下げづらい状況が続きそうである。金相場は5月9日に1トロイオンス=1214ドルまで下落したものの、その後は急回復し、1270ドルまで値を戻している。トランプ政権への懸念が根強いうちは、引き続き高値圏で推移しそうである。そのうえで、トランプ大統領に関する新たな材料や証言が出てくれば、政治的な混乱拡大の懸念が高まり、トランプ大統領への弾劾要求が強まることで、金相場は1270ドルを超える可能性もあるだろう。

その場合には、米長期金利が上がりづらくなり、ドルは下落すると考えられ、これも金相場の一段の上昇を後押しすることになりそうである。また、トランプ政権の混乱が続けば、FRBも積極的な利上げに踏み切ることはできなくなるだろう。6月のFOMCでの利上げはともかく、年末までにさらに1回の利上げを行う可能性さえ低下する可能性がある。

このような定性的な見方に加え、定量的な見方も加えておきたい。それには、金価格と米実質金利の動向を比較するのが最も適切だ。米実質金利は最も低かった2月のマイナス0.342%から、4月にはプラス0.082%に上昇している。実質金利の上昇は、金利が付かない金価格にとっては、一見、上値を抑える要因になる。

金の理論値は1トロイオンス=1450ドル

しかし、この実質金利の上昇は、最近の米国のCPIの低迷が背景にある。一方で、長期金利も上昇しておらず、実質金利が大きく上昇する基調にはない。したがって、実質金利の一方的な上昇が金価格の上値を抑える状況がさらに強まるとは考えにくい。ちなみに、2011年以降の実質金利と金価格の相関はマイナス0.77であり、かなり高いといえる。この関係から、実質金利を基にした金価格の理論値は1トロイオンス=1450ドルになる。現在の金価格の水準は1260~1270ドル前後であることを考えると、理論値からは15%前後、相当割安に放置されていることになる。

上記のような理由から、金価格は、今はどちらかというと心理面などでサポートされている印象だが、金利などの関係から見てもまだかなり安いというのが筆者の率直な感想だ。年内の1300ドル到達はすでに視野に入っており、1375ドル程度までの上昇も十分にあると考えている。

ただ、金の値動きを単に相場としてとらえるのはあまり適切ではない。金そのものをリスク資産に対するヘッジとして位置づけておけば、金相場の変動は気にならない。重要なことは、リスク資産である株式などの価格変動リスクに注意を払いながら、同時に金を保有しておくという姿勢だ。金利がつかないため、金投資は投資収益を逸失していると考える向きもある。しかし、それでもリスク資産の下落に対して少なからずヘッジの役割を果たすだろう。また、現状の金利水準であれば、金利のつかない金を保有するデメリットも小さい。むしろ、今後インフレになるのであれば、徐々に保有量を増やす必要が出てくるだろう。このように考えると、やはり金は手放さず、つねに手元に置いておきたい資産である。

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