金価格はあと15%ほど上昇する可能性がある

「トランプリスク」だけが強気の材料じゃない

一方、市場では、米国の政策金利の引き上げの「後ずれリスク」が高まっている。長期金利はなかなか上向かず、これがドルの上値を抑える一方、金利のつかない金にはポジティブな要因になっている。また、5月のFOMC(米連邦公開市場委員会)議事要旨では、FRB(米連邦準備制度理事会)が利上げに慎重な姿勢を示していたことが判明した。

FOMCの議事要旨によると、政策決定者たちは「最近の景気減速が一時的だとの追加の証拠を待つことが賢明だ」との見解で一致した。つまり、6月利上げ(13、14日でのFOMC)はほぼ決定的だが、その後の利上げの判断は慎重に行われる見通しであることが確認されたといえる。また、FRBが保有する資産圧縮については、年内に開始する方向を確認しているが、その場合には利上げが中断される可能性が高いことも、ドルの上値を抑えているといえるだろう。

ラエル・ブレイナードFRB理事は、「4~6月期の経済成長は加速が見込まれ、早期の追加利上げが適切」と発言、次回6月のFOMCで利上げが決定される可能性があるとの認識を示している。さらに、「1~3月期の経済成長の減速は消費の弱さが要因だったが、住宅投資や設備投資などは堅調」と指摘し、「消費の弱さは長続きしない」としている。

米国の物価上昇率が小幅なのも金相場にプラス

一方で、エネルギーや食料品を除いた物価上昇率が、FRBの目標である2%に達していないことから、「2%への明らかな改善の遅れは懸念要因」との認識を示し、物価が改善しなければ利上げを見直すかもしれないとした。一方、FRBが保有する資産の圧縮については、「毎月、少しずつ、予見可能な形で淡々と削減していく手法を支持する」とし、「満期償還から再投資する額に上限を設け、緩やかに再投資額を減らしていくのが望ましい」としている。

こうした発言などから考えると、FRBは利上げより資産圧縮を優先させたいのではないかと思われる。4月の米個人消費支出(PCE)価格指数は前年同月比1.7%上昇したものの、前月の同1.9%上昇から鈍化しており、昨年12月の同1.6%上昇以来の小幅な伸びにとどまった。インフレ率の伸びは前年同月比で3カ月連続の減速となっており、このままでは年末までの利上げ機運は盛り上がりにくい。このような状況も、金相場にはポジティブであるといえる。

通貨の側面からも支援材料がある。ドイツのアンゲラ・メルケル首相が、「ユーロ相場はドイツにとって弱すぎる」と発言したことはある意味では衝撃的だった。これをきっかけに、ユーロが対ドルで上昇したことは、ドル建てで取引される金にとっては当然ポジティブ要因である。さらに北朝鮮がミサイルの発射実験を繰り返すなど、北朝鮮情勢の不透明感は払拭されていない。さらに英国の中部マンチェスターのコンサート会場での自爆テロ発生など、世界的にテロ事件が頻発している印象がある。中東情勢も引き続き懸念材料であり、これらの地政学的リスクも、心理面から金相場を支える構図は変わりそうにない。

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