病院の「診療データ」は一体誰のものなのか 改正個人情報保護法施行で問われること

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カルテの保存期間については、保管スペースの関係で5年を経過したら破棄している医療機関もあるが、虎の門病院では、医療の継続性を担保するために院内で定めた一定期間保存している。北澤次長は、「カルテは誰のものかというと、患者さんのものでもありますが、そのファイルは病院のものですし、私たちのスタッフが記載していますので、カルテの所有権自体は、病院のものと言えると思います」と話す。

しかし、電子化された「診療データが誰のものか」という問いに対して、今は多くの医療機関で電子カルテ化に伴いデータ保存されているため、その判断はより難しくなっている。

患者にとって、診療データが個人情報だという意識が高まれば、自分の情報なのでより気軽に開示してほしいとの要望も出てくるかもしれない。

個人情報保護法に詳しい橋本愛弁護士はカルテについて、「患者さんご自身の個人情報が記載されているものではありますが、病院自体にそれを保存する義務があるという点で、他の個人情報とは異なる特殊性があります」と指摘する。

個人情報とは、生きている人間の情報のことを指し、家族歴が含まれれば別だが、その人が死んでしまうとその情報は、個人情報に該当しない。これを踏まえて橋本弁護士は、こう続ける。

「個人データの消去について、改正法で個人データの消去の努力義務が定められました。その個人データを利用する必要がなくなったときには、遅滞なく消去するように努めなければなりません。しかし、その患者さんが生きている間は、いろいろな病気にかかる可能性があり、病歴は非常に重要ですので、安易に削除することはできません。『個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)』には、個人データの消去の努力義務について、『法令の定めにより保存期間等が定められている場合は、この限りではない』と記載されていますので、カルテに記載された個人データについても消去の努力義務の対象外になると考えられます。患者さんから削除要請があったとしても、カルテには保存義務があることを丁寧にご説明せざるを得ないと思います」

カルテを含めて診療データの消去は医療機関にとって、大きな負担になる。例えば紙のカルテの場合、消去するには溶解する作業が必要になったりもするほか、電子カルテでもその患者が死亡するなどした場合、その分の個人情報を抽出する作業の手間も小さくない。

重要性増す医療者と患者の協働の意思決定

「協働の意思決定」の重要性を説明する山口直人・東京女子医科大教授

診療データは誰のものなのか、そして、どのように向き合えばいいかを考える上で、医療者と患者との関係性で注目されつつある、「協働の意思決定(Co-production)」という考え方がカギになりそうだ。

協働の意思決定とは、重要な治療方針や検査をするかどうかの判断を、医療者と患者が一緒になって決めようというものだ。

東京女子医科大の山口直人教授は、日本医療機能評価機構の医療情報サービスMinds(マインズ)事業で2002年度から、エビデンスに基づく診療ガイドラインの普及推進に携わり、診療ガイドラインを通じて医療者と患者が協働の意思決定をする重要性を訴え続けている。山口教授は、診療データについても、それに基づき医療者と患者が協働の意思決定をすべきだと指摘する。

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