引越社で和解、1人の従業員が「大勝利」の顛末

シュレッダー係へ配転は「社会的相当性欠く」

唯一、会社側の主張が通ったと見られるのは「弁護士費用は双方がそれぞれ負担する」という点のみ。ただこれも、解決金の額が弁護士費用を上回っていれば、金銭的な負担は会社のみとなる。解決金の金額が非開示なので、実際どうなのかは不明だ。

24日の会見時もシュレッダー係として勤務していた有村氏は、電話で会見に参加した。「実感がまったくない。客観的な感じですけれど『そうなのか』という感覚」と語った。

会見当日の勤務後、有村氏は「和解したと見せかけて何かかましてくるかもしれない」となお警戒を強める。「営業専門職にきちんと戻って働き出したら『戻ったんだな。よかった』と思えるのだろう」と、まだまだ実感がわかないことを重ねて強調した。

受け入れ態勢で本気度がわかる

今後の焦点は、有村氏が職場復帰した後の引越社関東の受け入れ態勢だ。2年前の復職では、形だけの復職であったために、その後に新たな訴訟をもたらした。

昨年、プレカリアートユニオンの支援のもと、抗議の声を上げる有村氏(写真中央)(記者撮影)

前回の配転無効の仮処分申請に比べれば、今回は待遇などが細かく定められている。このために不測の事態は起きようがない。ただ、有村氏を受け入れる雰囲気が復帰する支店に整っているかどうかは未知数だ。

今回、引越社関東が本当に反省しているなら、支店の受け入れ態勢作りに意を尽くすだろう。しかしそうでなければ、有村氏は復帰後も心労を強いられることになりかねない。労働裁判に勝って職場に復帰したものの、職場での人間関係がうまくいかず、思い悩む例は少なくない。

一方、引越社関東とプレカリとの係争はこれで終わりではない。過去の残業代不払いや弁償金返還訴訟で、元従業員らを原告とする集団訴訟が続いている。引越社関東から弁償金制度をなくし、労使関係を正常化することがプレカリの目的だ。

有村氏は「こうした問題は引越社だけではないと思っている。社会全体にこの闘いを知っていただきたい」と語る。政府主導の「働き方改革」が続く中、改革以前の問題として、労働者の当たり前の権利すら守られない実態があることを、われわれは忘れてはならないだろう。

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