1泊15万円!「滞在するレストラン」の勝算 ひらまつ、ホテル事業に100億円超を投資へ

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今回は既存の3軒を第1フェーズと分類。第2フェーズのリゾートホテルとして2018年7月に沖縄県宜野湾市で、敷地6740坪に客室数20室程度の開業を決めている。

ただ、これまでのホテル建設にかかった費用は1軒当たり12~15億円程度。沖縄は規模が大きいために建設費は30億円ほどに膨らむ見通しだ。

さらに、今後予定する30室規模のホテル2~3軒の開業を考えると「向こう3年のキャッシュフローだけでは足りず、100億円が必要となる」(服部副社長)という。

膨張する借入金

資本提携先のNTT都市開発に土地建物を売却したり、京都で9月に開業を予定する和食レストラン用地をリース契約に切り替えるなど、資金利用の効率化を進めている。

ただ、この1年のホテル事業への傾注によってバランスシートは悪化傾向にある。2016年3月期末に83億円だった借入金は2017年3月末時点で135億円に膨らんだ。財務の健全性を表すD/Eレシオ(負債資本倍率)は3倍を超えている。

服部副社長は「借入金も膨らんでいるので、さまざまな調達スキームを検討する」としながらも、具体的な方針は「想像にお任せします」と明示しなかった。

既存施設の賃貸やリース化といった捻出策のほかにも、自社保有する1358万株(発行済み株式の約28%)の売り出しといった手法が考えられる。

直近決算の減速感も懸念材料だ。前2017年3月期は、レストランの改修が相次いだことや婚礼単価の下落によって、上場来初めての減収となった(変則決算を除く)。

利益面でも食材費の高騰、ホテル事業拡大のための先行投資や年間150人という積極採用などの費用が重荷になっている。かつて25%近くを誇った営業利益率は16%まで低下した。

これまで小規模だからこそ高単価を維持できたが、今後、多店舗化・大規模なホテルを展開していけば、おのずと10万円を超える単価を維持できるかという問題にも突き当たる。

はたして、もくろみ通りにことは運ぶのか。高級レストランの多店舗化やレストランウェディングで市場を切り開いてきた、ひらまつの成長戦略が問われている。

松浦 大 東洋経済 記者

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まつうら ひろし / Hiroshi Matsuura

明治大学、同大学院を経て、2009年に入社。記者としてはいろいろ担当して、今はソフトウェアやサイバーセキュリティなどを担当(多分)。編集は『業界地図』がメイン。妻と娘、息子、オウムと暮らす。2020年に育休を約8カ月取った。

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