日本関連のスノーデン文書13本をどう読むか サイバーセキュリティと国際政治

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第1の文書は、2004年7月21日付になっている。米国はジョージ・W・ブッシュ政権、日本は小泉政権の頃である。この文書はNSAの部内誌「SIDtoday」(SIDはSignals Intelligence Directorate[信号情報部]の略)からの抜粋で、東京にある米軍の横田基地内でNSAのためのエンジニアリング支援施設がオープンし、37万5000ドルの経費のほとんどを日本政府が払ったと記している。もともとこの施設は神奈川県のキャンプ座間にあり、移設されたようだ。この施設で作られたアンテナ等がアフガニスタンでも使われたとしている。

第2の文書は2005年2月24日付けの1枚文書で、これも小泉=ブッシュ時代である。この文書は高周波の電波方向探知のための「クロスヘア(CROSSHAIR)」作戦をオーストラリア、デンマーク、エチオピア、ハンガリー、イスラエル、インド、イタリア、日本、ヨルダン、韓国、オランダ、ノルウェー、パキスタン、サウジアラビア、スウェーデン、台湾が支援していると述べている。作戦は1993年から始まっており、冷戦後、不安定化する国際情勢の中で米国の電波傍受に各国が協力していることを示しており、「サード・パーティーの協力なくして世界規模の米国の高周波方向探知ネットワークを持つことはおそらくできないだろう」という作戦担当者の言葉を引用している。サード・パーティーとは、米英豪加ニュージーランドのファイブ・アイズに入っていない米国の友好国のことである。

第3の文書は2006年5月17日付けで、これも小泉=ブッシュ時代のものである。この文書の意図ははっきりしないが、「分析と精製任務発展戦略」というものがNSAにあり、その一環として国際安全保障問題(ISI)任務が米国の首都ワシントンDCで行われてきたが、それを発展させるということを言っているようだ。NSAの大きな拠点はメリーランド州の本部の他、米国内ではジョージア州、ハワイ州、テキサス州にある。この任務をF6(評価の確定していない新しい情報源)、セカンド・パーティー国(ファイブ・アイズのメンバー)、サード・パーティー国の協力を得て拡大していくとしている。サード・パーティーの協力国は米国の経済、貿易、防衛問題にとって重要な国々で、ベルギー、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、ブラジル、日本、メキシコが挙げられている。

大韓航空機撃墜事件で暴露された自衛隊テープ

第4の文書は、2006年7月19日付けで、これも小泉=ブッシュ時代の文書である。1983年の大韓航空機撃墜事件の際、ソ連が撃墜したことを示す音声通信を日本のG2別室(おそらくは陸上自衛隊の調査第二課別室のこと。現在の防衛省情報本部)が傍受し、それが米国で公開されてしまったために日本側が困惑したと述べている。

これは、日本のインテリジェンス研究者の間では以前からよく知られていた事例で、実際このスノーデン文書の最後にもトム・ジョンソンが公刊した本に基づいていることが記されている。

おそらくはNSAも傍受していたはずなのに、なぜ自衛隊のテープが当時の米国で公開されたのか、これまで研究者たちは疑問に思ってきた。米国政府がNSAの能力を隠すためにあえて自衛隊のテープを公開したのではないかと疑われてきた。このテープが公開された後、ソ連が自衛隊の通信傍受能力を警戒したためにその能力は一時的に落ちてしまったと言われている。今回、この文書は、日米の二つのテープのうち、日本のテープのほうが、音質が良かったからではないかと示している点が新しい。

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