韓国の大統領選に「泡沫候補」が乱立する事情 供託金3億ウォンを失うかもしれないのに…
5月9日に行われた韓国大統領選挙。最大野党「共に民主党」前代表の文在寅(ムン・ジェイン)候補や、与党「自由国民党」の洪準杓(ホン・ジュンピョ)候補、第2野党「国民の党」の安哲秀(アン・チョルス)候補など、事実上、有力候補5人による選挙戦だ。一方で今回の選挙にはほかに8人の候補者がいる。こうした候補者を韓国では「群小候補」と呼ぶ。いわゆる”泡沫候補”たちだ。
泡沫候補たちの当選可能性は、あまりにも低い。それでも、彼らは3億ウォン(約3000万円)の供託金を出して、厳しい選挙戦に打って出た。なぜ、総額数十億ウォンかかるとされる選挙費用を出してまで、彼らは出馬したのか。
韓国の公職選挙法によれば、投票日を基準にして5年以上韓国国内に居住している40歳以上の国民は、誰でも大統領選に出馬できる。ただ、むやみな候補者乱立を避けるため、出馬時に供託金3億ウォンを出すようになっている。投票の結果、15%以上の得票率を得ると、この供託金は全額戻ってくる。10~15%未満だと、半額の1億5000万ウォン(約1500万円)が戻ってくるが、10%未満だと全額戻ってこない。
得票率で供託金を全額失うこともある
そのため、当選可能性の低い泡沫候補にとっては、カネをどぶに捨てるようなものだ。全国を駆け回る選挙戦には、数十億ウォンの資金が必要。たとえば遊説に使う車1台を用意するには、車種にもよるが1500万~3000万ウォン(約150万~300万円)の費用がかかってしまう。
これほどカネがかかる大統領選に、それでも泡沫候補たちが出馬する第一の理由は、知名度向上のための「広報」の一環であるためだ。全国あちこちにある、自分の顔が写ったポスターによって、自分の名前と顔、公約や政治信条などのメッセージを、津々浦々まで知らせることができる。この効果を考えると、たとえ数十億ウォンかかってでも、十分な費用対効果が得られるという。
だが、同じ泡沫候補でも、各候補によって財政事情は違う。「富める者はますます富み、貧しきものはますます貧しくなる」とは韓国社会の所得格差を指してよく使われる言葉だが、泡沫候補の中でもこれが当てはまる。公約など選挙資料を分厚く作成、かつ手広くばらまくことができる候補がいる一方で、節約に節約を重ねてカネを思い通りには使えず、選挙資金を十分に用意できないまま立候補した候補もいる。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら