加熱式たばこ「アイコス」、人気沸騰の舞台裏

全国で品薄、ネットでも限定カラーが暴騰中

日本における加熱式たばこの市場は、すでに約200万人に達しているとみられ、これは全喫煙者の10%を超える。海外でも拡大しており、英ユーロモニター・インターナショナルの発表では、世界の加熱式たばこ市場は、2014年に70億ドル(約8000億円)、2030年には510億ドル(約6兆円)に拡大すると予想している。

従来のたばこも含む喫煙率全体を見ると、日本では1989年で50%と高かったものの、2016年に男性の喫煙者率がついに30%を切り、女性もいよいよ10%を割り込んだ。喫煙者数は今や約2000万人まで縮小。そうした中、フィリップモリスはスイス研究所で300人の専門研究者と研究開発を始め、これまでに約20億ドル(約2000億円)もの投資費用を投入。巨額をかけて開発した精密機械の加熱式たばことして、アイコスは起死回生のヒットを飛ばした画期的な商品といえる。むしろこの製品の登場によって、従来型の煙の出るたばこ喫煙率も下がるのでは、と期待できる。

スティックの電源を入れ、蒸気を吸い込む

このアイコスでは、今までのようにたばこ葉を燃やして煙を吸うという行為でなく、あらかじめバッテリーで充電したたばこ葉の加熱用スティックにたばこを差し込む。スティックの電源を入れると、内部の金属板ブレードが数十秒で約300度まで加熱され、熱によって出てくるたばこの蒸気を吸うというものだ。

本体の充電は、USBを通じたフル充電なら、1箱20本分くらい使える。スティックへの充電は約4分ほど必要で、充電完了後にたばこをセット、加熱を始めて終わってから、14回吸い込むかまたは6分間たつか、そのいずれかで終了となる。充電カートリッジへ戻すと、またスティックへ充電が開始される、という仕組みである。

当初は4種類だったが、4月から新フレーバーのパープルメンソール(右手前)などが追加された(筆者撮影)

たばこ自体の価格は、1箱20本入りで460円(税込み)と、普通のたばことそう変わらない。現在は1972年に誕生した「マールボロ」ブランドとして、レギュラー、バランスドレギュラー、メンソール、ミントの4種類がコンビニなどで販売されている。4月17日には新フレーバーとして、スムースレギュラーとパープルメンソールを追加投入、快進撃を続けている。

ただし、スティックだけで使うことはできないため、初期投資として、充電器とスティックが入った、標準キット9980円(税込み)が必要だ。すでにヨーロッパでは、パーラメントブランドが売られているので、近い将来、日本展開があるかもしれない。

もうひとつ、ヒットを後押しした要因として、財務省の指針で宣伝活動が制限されていたため、逆に有利に動いたことも背景にある。昔なら力技でテレビCMを大量に流したものだが、現状の法律ではできず、このたばこ広告規制法によって、かえってじわじわと浸透し、ロングランとなっているのではと思うからだ。

地域限定で販売された2015年9月から、たった半年間でネットや口コミで「あのタレントが吸っている」などと、相当な拡散効果があり、結果的に息の長い商品になっている。わざとフィリップモリスが品切れを作り出しているとは思えず、広告規制があったからこそ、知る人ぞ知る”不思議な謎の商品”とされ、全国で在庫不足に陥っているのではないか。

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