観光客激減、エジプトに日本人客は戻るのか "春"から遠く離れて
ルクソールでは2013年に熱気球墜落事故、2015年にはカルナック神殿で自爆テロ事件も起きた。市民の大半が観光で生計を立てる町は冷や水を浴びせられ続け、観光名所はまるでゴーストタウン化する。最後にアブラハムさんは苦笑した。
「餌代がなくて馬が餓死したよ」
エジプトの魅力が"消えた"のではない
エジプト経済を支えていた原油輸出は国際相場の下落で減少。スエズ運河からの収入も中国景気の減速でアジアと欧州の貿易が停滞し、低迷を続ける。そして、有望だったはずの観光業も打撃を受けている。
「“春”の後に“冬”が来た」
ルクソール郊外で機織りを生業にする老職人がしみじみ話す。王家の谷の近くで農業とともに伝統の織物を作り続ける村にも、不振極まるエジプト観光、経済状況は影を落とす。しかし、彼は続ける。
「見なさい、遺跡は同じくそこにある。エジプトが変わったわけじゃない。足を引っ張るのはいつも政治です」
エジプトはこの6年、政治の激変を経験してきた。「アラブの春」後に起こったデモ、暴動、軍事クーデター、さらに頻発するテロなど、安定しない政治状況は時に暮らしの「足かせ」となっていった。
観光客を呼び戻す明るい動きや、「革命以降、初めてしっかりとしたマーケットの戻りを感じる」との声も実際に聞かれる。しかし一方で、治安問題や経済不振など、政治動向に左右される不安因子をエジプトはいまだ多く抱え込んでいる。
実は昨年の11月、ちょうど日本との直行チャーター便が往来を開始した時期、エジプト経済にとって大きな政策変更がなされていた。通貨であるエジプトポンドの固定相場制を廃して、変動相場制に移行させるというものだ。
強権とされるシシ大統領のこの政治決定は、はたしてエジプトを安定に導くのか、それとも再び混乱をもたらすのか。そして、観光客は戻ってくるのだろうか。
(写真:すべて著者撮影)
(この記事の後編は5月6日公開予定です)
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