ダメな上司は部下に真の「準備」をさせてない 防衛大で学んだ「高負荷」と「イメージ」の重み

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「最高の結果をイメージさせて準備させる」ことも防大式マネジメントのポイントの1つです。

達成感を感じられなかった富士登山

防大には定期的に大きな訓練があります。2学年の7月には「富士登山訓練」なんてものもあります。「富士登山」が必修となっている大学は全国広しといえど、防大くらいしかないと思います。

富士登山といっても、スタートは5合目からです。安全と健康管理は徹底しています。服装は毎度の訓練服装です。半長靴と呼ばれるブーツ、背囊(はいのう)と呼ばれるリュック、そして腰の弾帯には水筒といった具合です。

日本一高い山に登るということもあり、用意すべきものを教官から指示されます。7月とはいえ頂上は寒いので防寒用のフリース、8合目あたりから酸素が薄くなるので酸素ボンベもあったほうがなおよし。酸素ボンベに関しては「なおよし」だったこともあり、用意しませんでした。酸素ボンベを買いに行く「時間」も「おカネ」ももったいなかったですし、何よりも「大丈夫だろう」と高をくくっていました。

そして登山当日。晴れていました。訓練班と呼ばれる40人前後からなるグループで縦列を組んで登っていきます。

6合目、7合目と順調に登り切り、8合目も程よい疲労感の中で登っていました。そして、9合目になったときに急にしんどくなってきました。呼吸が苦しくなります。高山病です。完全に酸欠状態になりました。

酸素ボンベを準備していなかったからです。訓練班の同期が携行していた酸素ボンベで危機を脱しました。結果的に登り切りましたが、そこに達成感はありませんでした。

「必修」といわれている富士登山。自分の準備不足により、周囲にも迷惑をかけ申し訳ない気持ちでいっぱいでした。そして一歩間違えたら命の危険すらありました。準備を怠ると危ない、なめてかかると危ないという強烈な体験でした。

この経験もあり、訓練に臨むときの「準備」で手を抜くことはなくなりました。訓練日から逆算して、準備できるものはすべて準備しました。どんな訓練でも無事に元気な姿で終わらせる。周囲とも喜びを分かち合う。自然と訓練後の最高のイメージを想像しながら準備を行うようになっていました。

この「最高のイメージを想像して準備をする」という習慣は、管理職になったときにも生かされました。管理職になったとき、問題のある部下がたくさんいました。その中で唯一まともだったのがLさんでした。

毎日、まじめに仕事をしますし、他の部下たちと違って不平不満を言うわけでもありません。もちろん、周囲に悪影響を及ぼすタイプでもありません。ただ、1つ気になるとしたら、いつも落ち着きなくアタフタしています。

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