ソニーが「アニメ事業」に全力を上げるワケ スマホゲームの大ヒットで期待度急上昇中

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決算会見での吉田CFOの発言のほか、2月の社内報では約20ページにわたってアニメの特集が組まれた。昨年開催されたテレビ番組の世界最大の見本市「MIPCOM」では平井一夫CEOがアニメ事業の将来性についてキーノートスピーチで語っている。

ソニー平井社長も、アニメ事業の成長に期待しているようだ(撮影:梅谷秀司)

ここに来て、ソニーがアニメ事業への期待を寄せる理由は何なのか。ひとつには、ソニーが全体戦略として掲げているリカーリング戦略(継続的に収益を上げられる事業を重視する戦略)がある。

アニメはゲーム化、グッズ化、映画化、テーマパーク化など著作権を利用した多面的なビジネス展開が有効であるため、利益創出のチャンスも多い。

ソニーはスマートフォンや音楽プレーヤーの販売など単品売りきりのビジネスが主体だったが、販売縮小により業績が悪化した過去がある。そこで、近年はプレイステーションの有料会員サービスやカメラのレンズ販売など継続的に稼げるビジネスを全社的に強化しており、アニメ事業もそのひとつなのだ。映画事業のソニーピクチャーズも近年アニメの製作に力を入れており、1年半に1本程度だった制作本数を現在は年間2本ペースに増やしている。

2つ目の理由は、映画事業の不振だ。映画事業は近年ヒット作に恵まれず、今2017年3月期に1121億円の減損損失を計上するなど、業績が低迷している。そもそも、映画ビジネスは興行だけで投資を回収するのはヒット作でなければ難しい。

アニメの会社として認知されるか

従来はDVD販売など含め公開後3~5年で回収することができたが、動画配信ビジネスの拡大でDVD販売も縮小。動画配信事業者からの収入はDVD販売に比べ利益率が低いためDVDの販売減を補填するには至っていない。そこで、グッズ化などDVD以外のアフタービジネスの重要性が増しているが、アニメはグッズ化と相性が良い点でも有望だ。

またアニメを映画化する場合、すでに固定ファンがいるため実写映画より当たり外れが少ない点も魅力だ。人気の高いアニメであれば、スピンオフ作品を製作し、ファンを囲い込めるなどメリットは多い。

今後は「アニメの動画見放題サービスの展開も視野に入れている」(ソニーのエンタテイメント・金融グループの齊藤義範ゼネラルマネージャー)という。さらに「日本のアニメが受け入れられやすい台湾や香港などアジアでの展開拡大を目指す」(同)方針だ。

時流を読み、アニメ事業に本腰を入れ始めたソニー。近い将来、アニメの会社として認知される日が来るかもしれない。

田嶌 ななみ 東洋経済 記者

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たじま ななみ / Nanami Tajima

2013年、東洋経済入社。食品業界・電機業界の担当記者を経て、2017年10月より東洋経済オンライン編集部所属。

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