日本人の大半が気づいてない財政危機の火種 17年度予算の中身と意味を知っていますか

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そもそも安倍政権というか自民党政権の大半は、行政の「節約」という選択肢は少ない。公務員の高すぎる賃金を減らそうとか、国会議員の数を減らすという発想は見受けられない。公共投資も「できればやりたい」ぐらいなのだろう。2017年度予算では、中高所得者の高齢者の医療・介護の負担を増やすことで予算を抑えるなどの微調整はしているものの、財政赤字の額の大きさに比べて行政府の「節約」は見えてこない。

あくまでも、経済成長をもたらすために積極的な財政政策や経済政策を打って、「税収増加」による財政健全化を目標としているのだろう。

とりわけ、アベノミクスは景気回復を前面に押し出して、「3本の矢」のひとつとして日本銀行が「異次元の金融緩和」を実行。さらには「マイナス金利」まで導入して、景気回復を推進してきた。デフレ脱却と称する景気対策であり、その結果として表れる税収増、財政再建を目指している。インフレ2%を達成することで、税収も増えていく、と思われていたのだが、残念ながら結果は裏目に出ている。

「ワニの口」が閉じることはない?

異次元の量的緩和、マイナス金利まで導入したアベノミクスだが、その兆候がはっきりと見えてきたのが2017年度予算の中身だったといっていいだろう。税収が増えて、財政再建化に道筋が見えてくるはずだったのだが、税収の伸びはここに来て大きく鈍化した。

2017年度予算の税収見積もりは57.7兆円にとどまり、その増加分は前年度比で1080億円にとどまっている。2016年度予算では3.1兆円の税収の伸びを予想していたことを考えると、かろうじて「プラスにした」という感じだ。

実際に、その中身を精査してみると、いわゆる「税外収入」の項目が増えていることがわかる。税外収入というのは、日銀や日本中央競馬会から上がってくる「国庫納付金」や国有地の売却収入などのことで、一時期話題になった「霞が関埋蔵金」と呼ばれる特別会計の積立金や剰余金、独立行政法人の基金返納分といったものも税外収入に含まれる。

2017年度予算の税外収入は、5.3兆円に達しており、2016年度予算よりも6871億円増えている。最近は、この税外収入が数多く活用されるようになってきた。潤沢にあったはずの霞が関埋蔵金も、積極的に手を付け始めてすでに10年近い歳月が流れている。

ちなみに、「外国為替資金特別会計」からの繰入額も8583億円増やしており、円安という追い風があったにせよ、税外収入の活用などと合わせて、何とか国債の発行額を前年より減らすという目標を達成した、と言っても過言ではないだろう。

実際に、2017年度予算では新規国債発行額(34.4兆円)を2016年度よりも622億円減らすことで「公債依存度」を35%に減らしている。公債依存度というのは、国債などの公債発行額を一般会計歳出総額で割ったものだが、かつては半分程度(48%、2010年度)を公債に頼っていた時期に比べると、数字だけは改善している。

これは、家庭でいえばへそくりを使って新しい借金を表面的に減らしているだけで、家計(財政)が火だるまであることに変わりはない。

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