2016年の家計調査では、エンゲル係数が大きく上昇して1980年代後半以来の高い水準になったことが話題となった。
エンゲル係数は「消費支出に占める食費の割合」だが、食費は生きていくためには削減が難しい支出であるため、所得が低い層では高くなり、所得が高い世帯では低くなる。エンゲル係数が低いことは、生命維持のために欠かせない食料品以外の消費を行う余地があり、家計の余裕が大きいことを意味している。
エンゲル係数上昇の要因は高齢化だけではない
日本では経済の発展に伴って所得水準が上昇し、エンゲル係数は長期的に低下を続けてきたが、2000年代に入ると反転して上昇傾向を示すようになった。この大きな原因は、日本経済が成熟化して所得の伸びが鈍化する中で高齢化が進んでいるという人口構造の変化だ。高齢者の世帯は子供の教育の必要性がないなど消費支出が少なく、エンゲル係数が高い。エンゲル係数の低下が止まり上昇に転じたことは、必ずしも日本の家計の余裕度が低下したということではない。
しかし、ここ数年のエンゲル係数の急上昇は人口構造の変化だけでは説明がつかず、所得が伸びない中で必需的な消費の代表である食料の物価が相対的に高い上昇率となったことが大きな原因であると考えられる。このことは、賃金上昇率が高まることによって物価の上昇が加速するという順番でデフレからの脱却が起こるのであれば問題はないが、物価上昇が賃金上昇よりも先に起こるという順番では、実質所得の減少から消費が低迷してしまい、結局デフレ脱却が頓挫してしまう危険性を高めることを示唆している。
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