DAZN、加入者数伸びても遠い採算ライン スポーツ映像配信、「波乱の船出」

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ラシュトンCEOは電話インタビューで「料金と機能などの面で差別化してプレミアムなスポーツ動画を提供し続ければ、われわれはWOWOWやJCOM、JSPORTS、スカパーなどの有料放送と同等の加入者数を持つプラットフォームになることができるだろう」と自信を示した。

同CEOは日本には1000万人のJリーグ・ファンがおり、このうち100─110万人がスタジアムに足を運んでいると指摘。残りの潜在顧客層に対しても「魅力的なサービス提供できると確信している」と述べ、「中長期的には非常に自信がある」と語った。

だが、三菱UFJリサーチ&コンサルティングとマクロミルが昨年10月に公表した「スポーツマーケティング基礎調査」によると、2016年のスポーツ関連のインターネット有料配信の市場規模(推計)は伸びているとはいえ、111億円にとどまっている。過去1年間にスポーツ関連のネット有料配信に支出した人の割合も全体のわずか1.7%(有効回答数2000人)だ。

10年スパンの投資モデル

Jリーグの村井チェアマンは2日、視聴トラブルを受けたDAZN会見後に記者団に対して「10年スパンの投資モデルなので、短期的な事象(トラブル)によって変質するものではない」と述べ、契約履行に対する懸念の払しょくを狙ったが、スポーツ映像配信をめぐってはソフトバンクも「スポナビライブ」で攻勢をかけており、競争は激しくなっている。

業界関係者からは「市場が広がっている手応えを感じている」との声も聞かれるが、スポーツ映像のネット配信はまだ立ち上がったばかりで、正確な市場規模はまだ見えない。

三菱UFJリサーチ&コンサルティング主任研究員の白藤薫氏は、今後も市場の伸びが期待できるとしながらも、「囲ってばかりで露出が少なくなるとスポーツの人気はなくなる。一部をタダにしてでも裾野を広げておかないと、有料で払う人はどんどん少なくなるので、そのあたりは考える必要がある」と語った。

DAZNの手探りの市場開拓は当分続きそうだ。

(志田義寧、サム・ナッセイ、ティム・ケリー)

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