フランスの学校は「保護者の負担」が少ない PTA活動は、やりたい人が積極的に参加する
「親の仕事」が少ないだけではない。幼稚園も小学校も、授業時間や放課後の保育に、働く親への配慮がある。授業時間は、午前8時半ごろから午後4時半ごろまで。フランスでは、小学校低学年までの子どもの送迎は保護者の義務となっているが、短縮授業がほとんどなく、毎日同じ時間に迎えに行けばよいので、わかりやすかった。
さらに、幼稚園では午後6時半までの延長保育、小学校では午後6時まで宿題をみてくれる補習があった。この時間まで子どもを預かってくれるのならば、働く親も安心して仕事ができる。小学校では、ダンスや英語などの習い事も低料金でできた。
「PTA役員決め」はやりたい人が手を挙げる
PTA活動は、日本と少し趣が異なる。日本の小学校では、役員のほか各クラスから数人の委員を選出する。一方、フランスの公立小学校には、教師と保護者で構成する学校評議会があり、評議会に参加する保護者は、全学年の保護者の投票で決める。子どもが通ったフランスの公立小学校では、評議会に選出される保護者は約20人だった。この小学校には、左派と右派の2つの保護者の団体があった。評議会に立候補するためには、保護者の団体に所属する必要があるが、一般の保護者の団体への参加は任意だ。評議会選挙にあたって、2つの団体から公表された候補者リストには、父親も少なくなかった。
選挙が近づいたある日、知り合いの母親から声をかけられた。「私、評議会に立候補しているの。私の団体に投票してね」と。日本ではPTAの役員決めは難航することがしばしばあるが、フランスでは意欲のある人が自ら進んで手を挙げているのだ。
それにしても、仕事に加えてPTAの活動もするのは大変ではないだろうか。学校評議会に参加した経験のある知人は、「仕事との両立はそれほど難しくない」と言う。年4回の会合は夕方以降などに開かれたので、仕事を休む必要はなかったという。
評議会では、学校で行く旅行の費用が妥当かどうか、困難を抱える生徒への対応など、さまざまな問題が取り上げられる。学校で使うパソコンが足りなかったときには、評議会の保護者で市役所に手紙を書いて窮状を訴えた。その結果、追加のパソコンが学校に配備されたという。「評議会では、子どもたちが学ぶ環境をより良くするために話し合う」と言う知人は、活動にやりがいを感じているようだった。
知人の学校では、ほとんどの保護者が働いているにもかかわらず、評議会への立候補者がいないという事態は起きたことがないそうだ。フランスの法定労働時間は週35時間、年間の法定有給休暇は5週間。ゆとりのある労働環境が、学校評議会のようなボランティアにかかわることを可能にしている面もある。
幼稚園や学校に子どもを通わせるうえで保護者の負担が少なければ、学校生活をサポートするために消耗せず、仕事をより効率的にこなせるだろう。家庭では、子どもとゆっくり向き合う気持ちの余裕も持てる。
現在、日本でも共働き世帯の数は専業主婦のいる世帯の数を大きく上回っている。それにもかかわらず、学校行事もPTAの活動も、専業主婦家庭を標準モデルとして行われているようだ。働く親が無理なく参加できる形にできないものだろうか。
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