米国産牛肉の輸入再開で韓国“騒乱”

李明博大統領の前途多難 

韓国・ソウル市内に無数の光が、まるで生き物のようにうごめく。米国産牛肉の輸入再開で噴出した、数万人規模の怒りのデモが街中を練り歩いているのだ。1987年の民主化以降、大規模なデモや集会が2カ月以上も続いたのは、今回が初めてだ。韓国の政権に及ぼした影響でも、過去最大となるのではないだろうか。

李明博大統領が選挙で大韓民国建国以来、最高の得票率を獲得して勝利したのは、わずか半年前の2007年12月。08年2月末の正式就任からたった3カ月で、賞賛の拍手は「李明博退陣」のプラカードを掲げるシュプレヒコールに変わった。今でも、反政府集会や警察と衝突する激しいデモが繰り広げられている。

支持率は一時10%台にまで急落。李大統領は国民から「NO」を突き付けられた形だ。しかも、米国産牛肉輸入問題騒動で大統領が2度の謝罪を行うなど、韓国における大統領の権威は地に落ちてしまった。

6月6日は大統領府の首席秘書官級7人全員が、また10日には韓昇洙(ハンスンス)首相をはじめ閣僚全員も辞意表明した。20日には首席秘書官の全員を更迭。閣僚も、7月7日に鄭雲天(チョンウンチョン)・農林水産食品相など3人の更迭に踏み切った。

政権がここまで追い込まれたのは、4月の李大統領訪米が発端になっている。03年からBSE(牛海綿状脳症)対策として行っていた、米国産牛肉の輸入制限を撤廃したことが導火線となった。この件は、07年4月に韓-米FTA(自由貿易協定)の劇的な合意がなされたときにも、最大の懸案事項だった。

そもそも米国産牛肉の問題は、前の盧武鉉(ノムヒョン)政権時代の案件だったが、李大統領自らもFTA推進は公約の一つでもあり、粛々と懸案の課題を整理していったつもりだった。しかし、これだけで終わらなかったのだ。

それは一つの民放のテレビ番組から始まった--。

「大部分の韓国人は、BSEにかかりやすい遺伝子を持っている」という、韓国のある大学教授の説を報道した途端、この説が瞬く間にインターネットで拡散していった。

すると、「キャンプデービッド(米大統領の別荘)の宿泊料として、牛肉輸入の再開を決めたのか!」と国民の怒りに引火。大統領弾劾を求めるネット上の署名がすぐさま60万人を超えてしまった。これが、現在まで続く反政府集会とデモの「始まり」である。

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