「英国の新幹線」が日本の道を昼間走った理由 「地元の子供に見せたい」と、実現に向け奔走

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笠戸事業所の操業は目下ピーク状態。夜間にも100人程度の従業員が作業を行っている。協力会社も大忙しで、「作業量が1.5倍に増えた」(日立笠戸協同組合)という。日立が受注した866両のうち、笠戸で100%製造されるのは76両。残り790両はボディや台車の核となる部分を笠戸で造り、英国の工場で最終的に組み立てられる。

日立は2015年にイタリアの車両メーカーを買収し、英国だけでなくイタリア国内にも工場を持つ。自動車などほかの産業の海外展開の歴史を見れば、輸出から現地生産にしだいにシフトしていくのが通例だ。

子供たちがモノづくりにかかわる

しかし、笠戸事業所における海外向け車両の生産がゼロになることはない。笠戸は国内外すべての鉄道車両の設計開発拠点という役割を担っている。「設計開発と生産現場は近いほうがよい」(日立製作所)。IEPのようにコアとなる部分は日本で造って、海外の工場で組み立てる。あるいは量産先行車を笠戸で造って、性能面での改善点や効率的に製造できる点を洗い出した後に、海外で本格生産するといったやり方が考えられる。

この日、父親に肩車され目を輝かせて陸送を見た子供たちが20年後あるいは30年後に下松の地で海外向け車両を造り出しているかもしれない。モノづくりの承継。それはきっと、道路を走る“新幹線”を観光資源化するよりもすばらしいことに違いない。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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