「英国の新幹線」が日本の道を昼間走った理由 「地元の子供に見せたい」と、実現に向け奔走

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英国CTRL線を走る日立製の高速車両(記者撮影)

その日立では、目下英国向けの車両製造がヤマ場を迎えている。2007年に英国CTRL線を走る高速列車28編成、168両を2億5000万ポンドで受注した(その後1編成追加発注があり29編成、174両に)。さらに2012年にはIEP(都市間高速鉄道計画)の受注に成功し596両の高速鉄道車両の製造に着手、翌2013年には追加で270両を受注した。保守契約も合わせれば総額57億ポンドのビッグプロジェクト。車両製造は2018年頃まで続く。

2015年7月、笠戸事業所で製造された英国IEP向け高速車両「クラス800」が徳山下松港で川崎汽船の最新鋭RORO船(大型貨物を運ぶ船)に積み込まれた。それまで笠戸事業所に近い徳山下松港には大型船が着岸できる設備がなく、英国向けの列車は艀(はしけ)でいったん神戸港まで内航輸送した後に、外航船に積み替えて輸出されていた。しかし徳山下松港が整備されたことで、笠戸事業所から直接船積みできるようになった。輸送日数の短縮、積み替え時のリスク回避など日立にとってのメリットは計り知れない。

子供たちに陸上輸送を見せたい

港湾の整備に尽力したのが、当時県議会議員だった国井益雄・下松市長だ。RORO船はシンガポール海峡やスエズ運河を通り、2カ月近くかけて英国ダーラム州ニュートン・エイクリフにある日立の工場まで運ばれる。

「この列車はどこで造られたんだ」「日本のKudamatsuという街だよ」。そんな会話が英国で交わされているかもしれない。「この列車が工場を出発して英国に送られる姿をぜひ子供たちに見せてあげたい」と国井氏は誓った。

2016年4月、下松市長に初当選した国井氏は、早速、夢の実現に向けて行動を開始した。笠戸事業所や警察署をはじめ多くの関係者を説得して、1年がかりで実現にこぎ着けた。

「新幹線が道路を走るんだってさ」。3月5日の午前、下松に向かう普通列車の車中のあちこちで、そんな会話を耳にした。列車が駅に停まるたびに、カメラを手にした若者からお年寄りまで多数の人たちが乗り込んできた。そして下松駅に到着すると、大半の乗客が下車して、観覧エリアへ向かってぞろぞろと歩き始めた。

陸送ルートは笠戸事業所から徳山下松港・下松第2埠頭までの約4キロメートル。専用トレーラーに牽引された1両の鉄道車両が国道や県道を40分かけて進む。下松第2埠頭の手前にある交差点でゆっくりと左折するため、交差点付近が大きな見せ場だ。交差点は市民運動場に面していることから、歩道を含むこの周辺が観覧エリアに指定された。

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