(このひとに5つの質問)古森重隆 NHK経営委員会 委員長
NHKが提示した「5カ年経営計画案」に対し経営委員会は再提出を命じた。第三者委員会を新設し来年9月には結論を出す。委員会後の会見で「異例」の決定について語った。(『週刊東洋経済』10月6日号より)
NHK計画案は具体案不足 もっと踏み込めるはずだ
1 受信料値下げを盛り込んだ次期経営計画案の承認を見送った理由は?
新たな環境、社会の激変や技術の進歩に対応して、新たなNHKは何かということを一度立ち止まってしっかり考えないといけない。視聴者還元や番組制作力の強化など今回の執行部案は評価する点もある。ただ、全般に「骨太なNHKのあり方」には踏み込み不足と考えざるをえない。
限られた時間の中で制約があったかもしれないので、もっと時間をかけてゆっくりやろう、というのが建設的な考え方だと思う。
2 提出された計画案は具体案が不十分だったと?
具体的な数字はずいぶん出ているが、それがなぜ達成できるかという説明が十分ではないと感じた。たとえば子会社34団体を来年には28にするということだが、それ以上どう進めるのか。そこで止まるわけないだろう、と僕は思うしね。(根拠は)ないけれどできると思うよ。できないならできないなりの検討結果が示されるべきだ。
3 受信料についても、さらに値下げできるということですか。
もう少し、量も質も踏み込んでくださいよ、と言いました。ということは、当然(値下げ幅も)大きくなるのではないか。同時にここは本当に投資すべきところに投資しているか、漏れがないかというところも見直す必要がある。
4 昨年6月の総務省「竹中懇談会」の結論を経て議論してきましたが、結局NHKは今回も成果は出ずじまいです。
前進させようと思ってやっている。それはやらないとしょうがないでしょう。ただ、僕らは経営委員といっても本職がありますから、時間的な限界がある。結局は執行部に一生懸命やってもらうということに尽きる。
5 執行部の計画案を却下したことで、委員会側は対案を提示しないのですか。
だから(委員会下で計画案のガイドや精査を行う第三者委員会)「経営改革ステアリングチーム」をつくる。執行部側も含めてつくって、どこまでできるか腹を割って話し合おうよ、と。(受信料)還元数値も根拠を持って練り直す。
「経営委員会なんて何になるのか」「素人に何がわかるのか」となるが、経営は共通した点があるからそれはわかる。だが対案となると、立法と行政でいえば立法現場にいるわけではない。だから最初から立法と行政が一緒になったチームをつくる。
(人選は)ノーアイデアだが、執行部側の意見も聞いてやる。この1~2カ月で人選して第1回までこぎ着けるかどうか。それくらいのペースでやらないとあと1年あるといっても、あっという間に過ぎちゃうからね。
(書き手:倉沢美左)
こもり・しげたか
1939年9月5日生まれ。63年現富士フイルムホールディングス入社。常務取締役等を経て、2000年社長就任、07年6月CEO就任。同年6月からNHK経営委員会委員長。
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