自転車界のインテル、「シマノ」高収益の秘密

ツール・ド・フランス出場チームも部品を愛用

1921年、シマノは堺の町工場、島野鉄工所として創業した。最初に作った製品は「フリーホイール」。自転車後輪に付けられるギアだった。その後、一般自転車向けの内装三段変速機などにも製品群を広げた。スポーツ向けに進出する前に、一般自転車の普及価格帯の製品で基盤を固めたことが圧倒的なシェアにつながっている。

シマノが1921年に開発した最初の部品、「フリーホイール」(記者撮影)

シマノの強みは高い品質と耐久性、リーズナブルな価格だ。これらを実現する上でカギとなったのが、シマノが1960年代から培ってきた精密冷間鍛造の技術だ。

冷間鍛造は常温のまま金属に圧力をかける加工方法。切削工程が最小限で済むため、原材料の使用量を抑えられる。また、熱を加えるよりも精度の高い加工が可能で、歩留まりもいい。コストを抑えつつ、精密な部品を大量生産できるのだ。SMBC日興證券の岡芹弘幸シニアアナリストは「この技術を持たない他社はアルミを切削したり、(代替素材として)炭素繊維を使ったりするので余計なコストがかかっている」として、シマノのコスト競争力を評価する。

いち早く海外へ進出

自転車の国内需要減少が予測される中で海外に活路を見出そうと、1965年にはいち早く米国に進出し販売会社を設立した。ここで生きたのが冷間鍛造の技術だった。1980年代に米国でマウンテンバイク(MTB)ブームが到来した際には、冷間鍛造でいち早く部品を量産化してその波に乗った。一方、当時「サンツアー」ブランドの部品で人気を博していたマエダ工業は、生産が追いつかず出遅れた。

1972年には欧州にも販売会社を設立。市場での存在感を高めるため、まずレース用部品でのシェア拡大を目指した。

現在シマノが手掛けているマウンテンバイクのコンポーネント(記者撮影)

変速機やブレーキなど、駆動系の部品一式を「コンポーネント」としてセットで開発し、販売を始めたのもシマノだ。複数のメーカーの部品を単品で購入して組み合わせるよりも、同社の部品を一括で購入した方がより高い性能を発揮できる。

コンポーネントという概念が生み出されて以降、「シマノの部品を使っていないと自転車が売れないため、完成車メーカーの大半はシマノの指名買いをするようになった」(自転車ショップ店員)。こうして世界中で市場を占有してきたのだ。

2016年12月期の連結決算は売上高3229億円(前期比14.7%減)、営業利益645億円(同24.1%減)で減収減益となったが、それでも営業利益率は2割と製造業としてはかなり高い。

シマノの業績は、春先の欧州の天候や完成車在庫の動向に左右される。2014~2015年は欧州の春先の天候がよく、流通在庫の積み増しが行なわれた。シマノもその流れに乗って、2015年に最高純益(761億円)を更新した。一方で2016年は完成車メーカーが在庫調整に動き、欧州も天候不順に見舞われたため、シマノの部品出荷が進まなかった。

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