中国政府、市場とのコミュニケーションに苦戦 金融市場で度重なる混乱

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「市場の受け取り方こそ問題だ」

こうしたメッセージを具体的な数字に変える過程が市場で混乱や不安を引き起こしている。

新華社は楼継偉財政相が2013年の国内総生産(GDP)伸び率について、公式目標の7.5%からの事実上の引き下げを示唆したと伝えたが、その後この報道を訂正した。市場は政府が景気刺激策を打ち出すのではないかと憶測をめぐらせ、複数の政府当局者がこの問題で真意を伝えようと努めた。

敦沛証券のウォン氏は、新政権は不動産価格の上昇や成長鈍化など多くの面で我慢強さを見せているが、「このことがコミュニケーション不足と受け取られ、市場を混乱させているのは皮肉なことだ」と述べた。

アナリストの中には、一貫性のなさが問題なのではなく、市場が当局の意図を読み取ろうとして解釈を広げてしまったとの見方もある。

第一上海証券(香港)のストラテジストのLinus Yip氏は「政府のメッセージは明白で矛盾はなく、市場の受け取り方こそ問題だ」と話す。

一部の政策当局者の動きが投資家にとって道筋や真意がくみ取れないものだった面もある。6月に中央銀行が短期金融市場の流動性を絞った際には、不安を払しょくしたり理由を説明することがなかった。

ただ公平さのために言えば、こうした対話上の問題は政府の経済に対する見方の急激な変化を反映した面もある。

クレディ・アグリコル・CIB(香港)のシニア・アジア・エコノミストのダリウシ・コワルツキ氏は、最近の経済統計は弱い数字で、当局は先月から中期的な利益のために短期的な痛みを我慢するという戦略を修正し、急激な減速は避けるという意思をはっきりと示さざるを得なくなったと指摘。「経済の安定をしっかりと確保してから改革のメッセージに戻るだろう」と予想した。

(Pete Sweeney、Clement Tan記者)

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