保活の選考「優先順位」に翻弄される親たち 「引っ越し」がアダになる区も

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国も自治体も企業も本気で取り組んでいるはずの待機児童問題だが、今年も1次選考で不承諾になった親たちの不安や怒りがSNSや街頭にあふれる。多くの自治体が、希望者の保育ニーズを点数化して高い順に入園を決める「ポイント制」をとるが、「きょうだい加点」の見直しや「育休加点」の新設など試行錯誤が続く。本誌は1月30日号で、基準の細分化や加点を得ようとする人が増えることで、子どもの人数や世帯年収など「優先順位」にまで審査がもつれるのではと指摘。実際、大きな悲鳴が上がったのが冒頭の女性が暮らす墨田区だった。

転勤で2年前に引っ越してきた別の女性も1歳児クラスで「不承諾」。区に問い合わせると、同点で並んだ5園はすべて居住年数で負けていた。このルールを知らずに引っ越してくる人を減らしたい、とツイッターで情報発信を始めている。

「居住3年」がボーダー

変更のきっかけは昨年6月の定例区議会。自民党の議員が、区の基本計画が掲げる「安心して子育てができ、子ども・若者が夢や希望を持てるまちをつくる」の実現には定住層の確保が重要だと指摘し、「あらゆる施策を通じて明確なメッセージを打ち出すべきだ」と提案したことだった。議事録は公開され変更事項はホームページに掲載されたが、親たちの多くは保育園の申し込み直前に配布される案内でそれを知ることになる。

スカイツリーが開業してマンション建設も進む墨田区。子ども課の担当者によると、「おおむね居住歴3年未満の方が厳しい状況だった」という。

調べると、東京23区のうち「居住歴」を優先順位に入れている区は15。最後の比較項目とされているところが多いが、墨田、杉並、中央、千代田の4区が、世帯収入より優先順位を高くしていた。今後、居住歴を優先する自治体が増えれば、子育て世帯の転居は難しくなる。

「母になるなら、流山市。」とうたい、子育て世代を呼び込む千葉県流山市も基準を変更。今年から親の1日の労働時間に「休憩時間を除く」という一文を入れた。都内から引っ越してきたフルタイム共働き女性は、今回の変更で点数が下がり、0歳児クラスで「不承諾」。「育児と仕事を楽しんで~なんて詐欺」とツイッターに書き込んだ。

全国で、2次選考結果の通知が届き始めている。

(編集部・金城珠代)

※AERA 2017年3月6日号

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