「赤井英和」夫婦が子に託す果たせなかった夢 妻は危険を心配しつつも最後は応援に回った
結果は、判定勝ち。デビュー戦を飾った英五郎さんは、勢いに乗って、準々決勝に駒を進めた。翌日の準々決勝。英和さんが仕事で不在の中、佳子さんは、ひとりで息子の試合を見守った。
対戦相手は格上。序盤は互角に渡り合っているように見えたが、相手のパンチがヒットしたことをきっかけに一気に押し込まれる。懸命に食い下がる息子。佳子さんの口から自然に言葉があふれていた。
「前行け! 英五郎、頑張れ! 頑張れ! 頑張って!」
涙を浮かべながら、必死に声をからして応援し続けた。結果は惜しくも判定負け。それでも、英五郎さんは全日本選手権初出場で、見事ベスト8入りを果たした。
試合後、息子が母にかけた最初の言葉は「ケガはなかった。楽しかったよ。差があるって知っていたから」。でも、母は、こう言った。「私、悔しいわ」。負けた本人より佳子さんのほうが悔しがっていた。
3年後の東京オリンピックを目指して
今、英五郎さんは「ボクシングの本場」アメリカにいる。現地の大学に通いながら3年後の東京オリンピックを目指している。
寂しくないといえばうそになる。でも、佳子さんは、息子からの1通のメールを心の支えにしている。
「お母さんへ お母さんは、いつも働いて、ご飯を作って、掃除して、いつも動いています。お父さんも含めて、子供4人の世話を全力でしているから、体を壊す暇なんてない、と、いつも言っていますね。みんなを本当に陰で支えているお母さんを尊敬します。わがままでボクシングをさせてくれてありがとう。心配だと思うけど、大丈夫。今年は絶対勝つから」
東京オリンピックまであと3年。父と息子の夢は、母の夢にもなった。
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