(下)アデランスHDは岡本社長と2人の創業者が退任、引き続きスティールの出方に注目
(上より続く)これでとりあえず、臨時株主総会で新しい経営陣が決まることになった。だが、アデランスの経営環境は、決して楽観できるものではない。同社は、2002年2月期に過去最高の純利益を計上して以降、業績は長期低落傾向にある。利益率の高い男性用かつらが、主要顧客とする20~30歳代の人口減少や競争激化で苦戦しているためだ。このため、女性用かつらに注力して伸ばしているほか、買収した米国の毛髪移植会社2社の軌道化を急いでいるものの、低落トレンドを変えるのは容易ではない。
今後は、男性用の客層を40~50歳代まで広げて男性用かつらの下げ止まりを目指すほか、女性用を引き続き伸ばしたり、米国毛髪移植事業を軌道化させることが課題だ。今回、早川氏がHDの社長候補になったのは、同氏が現在社長を務める女性用レディメードかつらの子会社フォンテーヌの業績が好調で、今後のグループ長期戦略にも合致しているため、という。
一方のスティールにとっては、最大の関心はアデランスの経営自体ではなく、株価引き上げと保有株売却の方法だろう。04年からアデランス株を買い始めたスティールの保有株は約1115万株で、現在の2000円前後の時価では総額約220億円。平均買いコストは2500円前後と見られ、含み損は50億円を超えて、保有する日本株では最大とされる。従来から主張してきたアデランス保有のゴルフ場や有価証券の売却、といったリストラによる株価向上策を今後も要求するのは必至。また、経営陣による会社買収(MBO)でいったんアデランス株を非上場化させ、企業価値が向上した時点で保有株を高値で売却したい意向も持っているようだ。アデランスとスティールの経営を巡る対立は続きそうで、スティールの動向からは目が離せない。
【柿沼 茂喜記者】
《東洋経済・最新業績予想》
(百万円) 売 上 営業利益 経常利益 当期利益
連本2008.02 74,998 4,066 4,407 590
連本2009.02予 79,000 5,400 5,800 2,300
連本2010.02予 83,000 6,400 6,800 2,700
連中2007.08 36,296 461 865 -568
連中2008.08予 38,600 1,700 1,900 300
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1株益¥ 1株配¥
連本2008.02 15.3 80
連本2009.02予 59.4 30
連本2010.02予 69.7 30-32
連中2007.08 -14.7 30
連中2008.08予 7.7 15
(株)東洋経済新報社 四季報オンライン編集部
撮影:今井康一
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