大阪を再生できるか 「橋下改革」の行方
「橋下改革」の皮肉 教育現場が猛反発
とはいえ、橋下改革の行方には紆余曲折が予想される。皮肉にも、知事がこだわった教育関連施策に対し関係者が反発しているのだ。
プログラム発表当日、大阪市内にある私学会館は悲壮感に包まれた。「これから、どないしてやっていけばええんや」。集まった大阪私立中学校高等学校連合会の役員からは、ため息が漏れるばかりだった。
府内の私立学校は少子化を背景に、高校66%、中学校41%、小学校37%が定員割れ(=実質赤字経営、07年度)という厳しい経営環境にある。そんな中、プログラムには私学にとってマイナスの項目が多く並ぶ。学校運営費の約3割を占めている運営助成金の削減や、半数の生徒が受けている授業料軽減助成の見直しなどである。これらが実施されると、生徒数の減少などにより私学の学校運営が打撃を受けることは確実。連合会の平岡正巳会長は「知事の教育構想の中に、私学は入っていないのではないか」と憤る。
公立学校からも不満の声は上がっている。府立高校に配置された教務事務補助員は09年度に廃止の方向だ。教師の事務をサポートする補助員(非常勤)は府内に約340人おり、資料の印刷などに従事している。守口市の芦間高校で20年以上も図書室を切り盛りしてきた小林郁子さんは、生徒と向き合う時間の確保など教師の業務負担が増す中、教師が補助員の業務までこなすのは「不可能」と言い切る。
関係者の抵抗が強いことから、教育関連などの項目でプログラムに修正が入る可能性は十分にある。実際、PT試案からこれまでにも、複数の修正が加えられてきた。半減させるとしていた市町村振興補助金は「制度の再構築」にトーンダウン。ダム建設など大型プロジェクトの結論も結局先送りとなった。橋下知事は、反発の強いところでは、微妙に対応を変えてきている。
「修正が入るとしても、とりあえずこの案で議会にお願いする」。会見で橋下知事は一定の柔軟姿勢をのぞかせている。だが、修正が繰り返された結果、「骨抜き改革」にならないか。イメージが先行しがちな「橋下改革」だが、その行方を注意深く検証する必要がありそうだ。
(梅咲恵司 =週刊東洋経済)
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