韓流ケータイ大上陸! 本気になった巨人サムスン

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韓流ケータイ大上陸! 本気になった巨人サムスン

韓国サムスン電子(以下サムスン)が日本の携帯電話市場に本腰を入れ始めた。サムスンは、米アップルが7月に投入する「iPhone(アイフォーン)」に対抗し、タッチパネル方式の多機能の携帯電話「OMNIA(オムニア)」をソフトバンク向けに年内にも投入する。

 かつて1000万台以上の大ヒット機種を次々と生み出した伝説の開発者、朴佑淳(パクウスン)常務を日本市場担当トップに据えた。東京・六本木の東京ミッドタウンで開催したイベントではサムスン製携帯電話を全機種公開。日本メーカーとはケタ違いの機種数、斬新なデザインで、集まったソフトバンク販売代理店の度肝を抜いた。

サムスンは韓国最大の財閥、サムスングループの中核企業。DRAM、SRAM、NANDフラッシュメモリなどの半導体記憶装置のほか、薄型テレビ、液晶パネル、ディスプレー駆動用ICで世界シェア首位の電機メーカー大手だ。サムスンの07年の売上高は9兆8508億円と日本の電機大手、日立製作所や松下電器産業と同規模だが、最終利益7421億円と松下の倍以上という高収益を誇る。世界首位品が多いことによるスケールメリットの賜物だ。

サムスン製携帯電話の世界シェアは現在2位。携帯電話の生みの親、米モトローラが事業再構築にもたつく中、サムスンは07年の1年間で販売台数を42%も伸ばした。07年の携帯電話の部門売上高は1兆9800億円、部門営業利益は2300億円。携帯電話は高成長部門であるばかりか、市況変動の激しい半導体と違って、頼もしい高収益部門だ。

携帯電話世界最大手、フィンランドのノキアが今年に入って「日本で早期にシェア10%を獲得する」とブチ上げたのに対し、サムスンは目標数値を口にしない。朴常務は「日本に進出して2年しか経っていないサムスンと違い、10年になるノキアは自信がおありなのだろう」と言うが、ノキアの日本でのシェアは、サムスンと同様、現在1%そこそこだ。

最初は渋々の日本進出 次世代にらみ一転本気

今から2年前。サムスンの日本初上陸は、実は本意ではなかった。「日本ビジネスの立て直しのために、日本にもサムスンの端末を供給してくれないか」。携帯電話の欧州展開で強い結び付きがあった英ボーダフォンの求めに応じて、渋々、日本進出を了解した。06年3月のことだ。程なく日本のボーダフォンはソフトバンクが買収。日本進出の根拠は薄れたが、契約を引き継いだソフトバンクに端末を供給することにした。

サムスンはMCP(マルチ・チップ・パッケージ。記憶装置と集積回路を層状に重ねたもの)などの携帯電話の重要部品を日本メーカー各社に納めている。日本で携帯電話を販売することは、大口顧客を刺激しかねない。日本進出に乗り気でなかった最大の理由である。

一転してサムスンが日本に力を入れる背景には2年後に始まるLTE(ロング・ターム・エボリューション)がある。現在の第3世代携帯電話(3G)の後継規格で、第4世代(4G)に近い高速・大容量通信であることから3.9Gと呼ばれる。同規格はNTTドコモを筆頭とした日本のキャリアの開発が先行しているために、日本市場がその実験場と化しつつある。電話やメールはもちろん、カメラ、テレビ、音楽端末、インターネット端末としても高品質の日本の携帯電話は、これまで海外から「過剰品質」と嘲笑を誘った。だが、3年後に規格が固まる4Gまでを見据えると、日本は最も先進的な市場だ。

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