「君の名は。」は、観光産業も盛り上げている 日本人観光客誘致へ、バス会社が練る戦略
訪日外国人用の高速バスフリーきっぷ「昇龍道高速バスきっぷ」の発売状況からもその傾向がわかる。「昇龍道」とは、伊勢神宮から名古屋・高山・白川郷・金沢・富山・輪島といった観光地群が、中国人が好む龍が昇る様子に似た並び方であるとして名づけられた観光周遊ルートだ。きっぷの発売は海外のみだが、やはり急激な伸びを示している。
それだけに、濃飛バスとしては外国人利用を伸ばしつつ、日本人の利用を回復させることが、将来にわたる業績維持・発展に欠かせないと認識しているという。
高山市の発表によると、観光客数は2016年も増加している一方、濃飛バスの定期観光バス利用実績は、日本人と外国人の合計で2015年度から減少に転じている。訪日外国人の増加よりも日本人の減少が上回っているのだ。
これは定期観光バスのみの数字であり、現時点で濃飛バス全体の実績がそれほど問題視するレベルになっているわけではないが、当然ながら好ましいことではない。早い段階での原因究明とその対応策の実施は、企業戦略として必須である。
観光客の受け入れ余力に限界も
この点について岩切取締役に聞くと、原因は「高山市内の宿泊施設の受け入れ余力が限られている」点、「白川郷―金沢間のバスがほぼ満席で、予約がしづらい状態が続いている」点、「高山―白川郷間は予約不要の路線バス増発でしのいでいるが、余力に乏しい」点の3つあるとのことだ。
宿泊については高山に一極集中しており、かつ早めに予約する訪日外国人で満室に近い状態のため、日本人観光客が気軽に来られなくなっているという。高山以外だと下呂温泉の宿泊は好調だが、奥飛騨温泉郷の利用は芳しくないとのことだ。日本人の発想だと、奥飛騨温泉郷で本物の温泉を楽しみ、往路か復路で高山市内を楽しむのは理想的なパターンと感じる。しかし、外国人観光客は奥飛騨温泉郷への路線バスは利用するものの、宿泊地は高山に集中しているという。
また、白川郷についてはバス駐車場を自家用車と分けたものの、すでに観光地として受け入れの限界に来ているという。高山―白川郷間の路線バスは、ピーク時には最大で1便がバス6台での運行となり、しかも午前中だけで4便あるため、社員総出で案内をする状態。運転士の不足や、高山濃飛バスターミナルの容量も限界に近づいていることから、増発も容易でなくなっている。
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