「世界一幸せなデンマーク人」と日本人の違い 働くモチベーションからして全然違う
意識調査によると、日本人はあまり幸せを感じていないようだが……。少なくとも「死ぬほど働く」という概念は、北欧の人たちには理解できないだろう。
――著書によると、特にデンマーク人はワーク・ライフ・バランスを重視しているようですが、どうやって仕事と日常生活をバランスさせているのでしょうか。
面白くない話かもしれないが、税金によって富の再分配ができていることが大きい。福祉が充実していて経済的に平等だと、必死に働いて稼ぐ必要がない。デンマークはノルウェーのように天然資源に恵まれているわけではない。それでも、彼らには商才があるようで、貿易できちんと経済を成り立たせている。
デンマーク人にとって働くモチベーションは?
――あまりに福祉が充実していたり、労働時間や意欲にかかわらず賃金が同じだったりすると、働くモチベーションがそがれる気が……。
私も同じようなことを考えたことがあるが、実際は違う。(世界銀行の調査によると)デンマークはビジネスがしやすい国、新興企業を始めやすい国ランキングで上位に選ばれている。デンマークはほとんど完全雇用に近い状態にある。
ただし、働くことに対するモチベーションは日本人と異なるだろう。デンマーク人が幸福な理由のひとつは、多くの人が自分の仕事が好きだと感じ、自分の仕事をコントロールできているからだ。
彼らは自主性を持って仕事をしていて、仕事に支配されていない。自分でやることを決めて実践し、その成果を実感することができる。その感覚や達成感が、仕事のモチベーションにつながっているわけだ。本にも書いたが、意識調査によると、8割のデンマーク人は宝くじで100万ドルが当たっても仕事を辞めないそうだ。僕からしたら信じられないけどね(笑)。
――デンマーク人にとっておカネや出世といったたぐいの「成功」はモチベーションにならないと。
一生懸命働いて200万ドルを稼いだとしても、どうせ税金で持っていかれるので、稼ぐことに重きを置いている感じはしない。所得が一定に達すると、半分は国に持っていかれるようになるからね。もちろん、デンマーク人だっていい車に乗ったり、大きい家に住んだりしたいと考えているが、ある程度収入を得るようになると「もういいや」と感じるようだ。
また、デンマークには「ヤンテの掟」という概念があって、たとえばフェラーリを乗り回していたり、アルマーニを着ていたりすると、「自分にはこんな資格があるのか? 思い上がるなよ」という自制の念のようなものが出てくる。
彼らにとってのモチベーションは、家族と過ごしたり、すてきなバケーションを過ごしたり、新しいことを学んだりするなどヒュッゲ的な時間を持つこと。デンマーク人には、私くらいの大人になっても学校に通っている人がたくさんいる。デンマークでは、教育は大人も含めてすべての人に開かれているからだ。彼らが欲しいのは、メルセデス・ベンツではなくて、新しい学びや旅行、サマーハウスだ。
――近年、北欧諸国にも移民が増えています。社会や文化、生き方などにどんな変化が起きていますか。
この10年ほどに移民が増えたことで、多様化が進み、非常に興味深いことが起きている。あまり大きくない国に、自分とは考え方も行動も違う人たちがたくさんやってくれば、衝突が生じる。北欧諸国も含めて、今の欧州はそのさなかにある。
毎朝コペンハーゲンで電車に乗ると、同じ電車にたくさんのシリア難民が乗っている。私の家のそばにも、たくさんの難民が住んでいる家がある。これは多くの人々の暮らしにショッキングな影響を与えていて、多くの人がこの状況をどうやって受け入れるべきか考えている。小さな国に移民が流れ込むことで、国は大きく変わらざるをえない。北欧では特にスウェーデンがその影響を大きく受けている。
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