「舛添発言」で急転 派遣法改正の焦点

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「舛添発言」で急転 派遣法改正の焦点

「日雇い派遣はもうやめる方向でやるべきではないか。かなり厳しい形で考え直すべきだ。秋には法律の形できちんと対応したい」。舛添要一厚生労働相は13日の閣議後会見で、秋の臨時国会に日雇い派遣を原則禁止とする労働者派遣法改正案を提出する意向を示した。

「ワーキングプアの温床」と批判される日雇い派遣。昨年から今年にかけて違法行為が常態化していたとして、業界大手のフルキャストやグッドウィルが立て続けに事業停止命令を受けた。野党はもちろん、与党内でも公明党が早くから全面禁止を訴えており、今回の舛添発言によって「原則禁止」の流れがさらに強まったといえる。

細切れ契約や突然解雇 不安定な登録型派遣

また、舛添発言は日雇い派遣にとどまるものではない。同日の会見で「普通のメーカーでやっている派遣が尋常かというと(そうではない)、私は常用雇用が普通だと思う」と言及。10日の閣議後会見でも、製造ラインの登録型派遣社員が起こした東京・秋葉原の無差別殺傷事件を受け、「特別な通訳など専門職以外は、やはり基本的には常用雇用というのは当たり前で、そういう原点に戻るべき。大きく政策転換しないといけない時期にきている」とした。これは派遣労働の大半を占める登録型派遣が内包する「不安定雇用」の問題を指摘したといえる。

かつて労働者の供給事業は職業安定法でほぼ全面的に禁止されていた。だが、1985年に労働者派遣法が制定されると、その後は規制緩和の一途をたどった。対象業務の段階的な拡大を追い風に、派遣業界は急成長を遂げ、今や市場規模は5兆円を超す。その8割強が、仕事があるときだけ派遣会社に雇われて契約期間派遣先で働く登録型派遣だ。

この登録型派遣ではトラブルが多発している。中でも社会問題化したのが、派遣法による縛りを嫌い、実態は派遣形態なのに請負を装って労働者を活用したとされた製造ラインの偽装請負だった。しかし、この手法が問題視された途端、厚労省によるお墨付きの下、多くの請負会社とユーザーは契約形態をすでに適法化されていた登録型派遣へ切り替えた。これで長年違法雇用を続けてきた事業者らの責任もすべてチャラとされた。切り替えで一時的に乗り切ったものの、今度は派遣期間制限(3年)が2009年3月から順次到来する。当時、請負から派遣へと転換を進めた各社は、再び期間制限のない請負への切り替えに躍起となっている。

ただ、事業者間の請負契約期間しか雇用が保証されない登録型という点で、労働者の立場は派遣と何ら変わりがない。その雇用期間は「1カ月から3カ月の細切れ雇用がほとんど」(派遣ユニオンの関根秀一郎書記長)。また、「雇用契約期間内でも事業者間の派遣・請負契約が打ち切られたら、次の仕事の提供も解雇予告手当すらなく放り出されるケースも多い」(ガテン系連帯の小谷野毅事務局長)。

派遣法では期間制限を超えて派遣労働者を使用する場合、ユーザーが直接雇用を申し入れる義務を規定している。だが、厚労省の調べによると、偽装請負の是正指導を受けたケースでユーザーが労働者を常用雇用(雇用期間の定めなし)したのは、わずか0・2%。ユーザーが望む柔軟な雇用調整=不安定雇用に対して、現行法は何ら歯止めをかけられていない。

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