日本が「競馬先進国」であるこれだけの理由 国際化が加速する中、世界でトップを争う

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ここまで聞いて、競馬を見てみたい、馬券を買ってみたいと思う人もいるだろう。毎年、年末になると、有馬記念の話題で盛り上がる会社の同僚や友人の姿を見て、自分も参加したいと関心を持つ人だって、あちこちにいるはずだ。実際、競馬は面白い。

ところが、競馬は初心者にとって、馬券の買い方や競走馬の情報がまとめて新聞などに掲載される「出馬表」の見方など、いろいろととっつきにくいことが多くて敷居が高い、というのが一般的な印象である。

競馬の「とっつきにくさ」がファン拡大の障壁だ

皆さんの中にも、有馬記念や、競馬の祭典と呼ばれる春の大一番で毎年5月に行う日本ダービーだけは馬券を買うという人が多くいると思うが、競馬に詳しい人に馬券を頼んで買ってもらうケースも多いと思う。実際に筆者もこの2レースだけは知り合いからの「頼まれ馬券」が多くなる。こういうファンが、実際に自分で馬券を買うことを思い立っても、いざとなるといろいろと戸惑ってしまうこともある。競馬がもう一段、二段と、さらに多くのファンをつかんでいくうえで、この「難しさ」が障壁になっていることは確かだ。

JRAの競馬場がある福島という地に住み、地方紙で競馬記者をしている筆者にとって、競馬は子供の頃から接してきた身近なものだった。1970年代、小学生のころに1頭の競走馬が社会的現象となったハイセイコーのブームを体験。大学を卒業するころには「芦毛の怪物」とたたえられたオグリキャップが爆発的な人気だった。競馬を楽しむことは日常で、その中で自然に覚えたというのが正しい表現だろう。

しかし、そんな筆者が初心者として競馬に接する人たちに馬券の買い方や仕組みを説明しようとすると、これはそれほど簡単なことではない。競馬は、釣りなどと同じで手引きしてくれる人の存在が不可欠なレジャーである。馬券の種類も多い。レースも見方がわからずに見ていればチンプンカンプンで、初めて競馬場を訪れた人が、レースが終わってからも結果を把握できずに「えっ、何が1着だったの?」と周囲に聞いているケースは意外に多い。

レースの見方にもコツのようなものがある。競馬を見る人には当たり前のことだが、レースではインコースからアウトコースまでのスタート位置である「枠順」によって騎手がかぶっている帽子の色が決まっている。騎手が着ているのは勝負服と呼ばれ、馬主ごとにデザインが異なる。帽子の色やゼッケン、勝負服などで自分が応援している馬を判別する。知ってしまえば案外簡単だが、きちんと判別するには慣れが必要だ。

レース観戦だけではない。馬券を買うためにはマークカードに記入しなければならないし、新聞などに掲載されている出走表や、そこで馬に付けられる「◎」や「△」といった印の意味などを理解することも大事だ。このあたりが、敷居が高いと言われる理由だろう。たしかに、覚えなければならないことはそれなりに多い。

時代に合わせて便利に変わったこともある。今では「インターネット投票(馬券を買うことを投票という)」も用意されているので、わざわざ競馬場に出掛けなくても馬券が買える。これが近年のJRAの売り上げ増を支えている。昨年末の有馬記念も、実は競馬場に直接訪れる入場者数は減っていたのだが、ネットで馬券が売れたことが売り上げ増につながった。

それでもやはり、競馬の醍醐味はナマでレースのスピード感や迫力を体験することだろう。競馬の楽しさを知らなければ馬券を買うのも長続きしない。だから、実際に競馬場で馬券を買って楽しむためには、身近なところに先生を見つけるのがいちばん早いかもしれないが、これは運次第というところもある。この競馬のとっつきにくさというハードルをいかに下げて、ファンの輪を大きく広げるか。JRAをはじめとする競馬関係者にとっての長年の大きなテーマだ。

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