ゼネコンにも「鉄道魂」、三陸の復興に燃える 単身赴任で働く作業員の"熱い現場"

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新設される津谷川橋梁の前後の専用道は線形や勾配が緩めに設計されている。鉄道は自動車と比べるとカーブや坂道に弱いため、鉄道として復旧された場合に列車が無理なく走れるような設計にしたのだ。「JR東日本は鉄道を復旧するつもりは最初からなかったのではないか」という見方もあったが、現場を見ればそうでないことはわかる。BRTに決まるまでは鉄道、BRTの両案が確かに検討されていたのだ。

気仙沼線BRTはすっかり地元の足となった(記者撮影)

BRTの“R”は「Rapid(高速)」を意味する。しかしBRTといえど一般道で渋滞にはまることもあり、鉄道と比べると定時性に欠けることもある。この点については、「バス専用道を整備することで定時性、速達性を高めたい。気仙沼線では9割を専用道にする」(JR東日本)。

もっとも専用道の整備はスピーディには進まない。気仙沼線のBRTによる仮復旧がスタートしたのは2012年だが、沿線自治体が本復旧を了承したのは2016年3月だった。仮復旧のときは鉄道での復旧という可能性も残されていたため、専用道の整備が本格スタートしたのは昨年春からなのだ。

しかもJR東日本、鉄建の双方にとって、線路をBRT専用道に変える作業は初めての経験。工事に際しても進入路を確保する必要があるなど特有の困難さを伴う。「工事を発注する前から施工者と入念な協議を繰り返した」。枕木とレールを撤去し、バラスト(砂利)については、骨材としてセメントといっしょにかきまぜて路盤として再利用する。

人手不測を補う工夫

JR山田線大槌川橋梁の作業現場(記者撮影)

津谷川橋梁の工事は昨年10月にスタートしたばかり。気仙沼線ではほかに6つの橋梁が被災しており、すべてが完成するのは3年程度かかるという。専用道の整備が完了するのはさらにその先の話だ。それでも専用道の整備が完了すれば、柳津―気仙沼間の所要時間1時間46分を鉄道並みの1時間30分まで短縮することが可能となる。大船渡線BRTの場合は専用道部分が5割程度と少ないが、気仙沼―盛間は1時間14分程度を鉄道並みの65分まで可能な限り近づけたいとしている。

津谷川橋梁の近くを走る国道45号三陸沿岸道路・気仙トンネルの建設も鉄建が担当していた。工事は2014年にスタートしており、完成予定は今年の3月。ほぼ完成状態に見える。トンネルの外では多くの作業員が仕上げ作業を行なっていたが、中に入ると作業員が誰もいない。「本来ならトンネルの中と外の作業を平行して進めますが、人手が足りない。普段は外の作業に専念し、悪天候で外の作業ができない日に全員でトンネル内の作業をしています」と鉄建の担当者が説明する。人手不足の中で工期をどう守るか。現場も知恵を絞っている。

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