ゼネコンにも「鉄道魂」、三陸の復興に燃える 単身赴任で働く作業員の"熱い現場"

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JR山田線閉伊川橋梁の工事は困難を伴った(記者撮影)

JR山田線・宮古―釜石間の復旧工事にも鉄建が参加している。中でも宮古駅近くにある第34閉伊川橋梁の復旧は難工事区間のひとつ。「閉伊川はサケが遡上し、アユ稚魚の放流も行われる。河川の中で工事ができるのは1年の半分くらい」と工事担当者は言う。

被害は甚大だったが基礎部分を調査した結果、まだ使える箇所もあることがわかった。こうした箇所は鋼材を補強して剛性を高め、新設部分とドッキングさせた。「使える部分は再利用する、早期に工事を完成させるという2つの点から有効と判断した」という。

閉伊川橋梁の工事はほぼ完了したが、同じく山田線で被災した大槌川橋梁の工事はまだ道半ばだ。橋桁が完全に流され、工事完了は2019年2月の予定だ。宮古―釜石間の復旧工事は2018年度末、つまり2019年3月までに完了する予定となっているため、大槌川橋梁の工事がおそらく最終段階まで残る工事なのだろう。

工事完成後の運営はJR東日本から三陸鉄道に移管される。三陸鉄道は北リアス線(宮古―久慈間)、南リアス線(盛―釜石間)の2路線を有しているが、山田線・宮古―釜石間が移管されると、三陸鉄道の路線が1つにつがなることになる。利用者にとってはメリットが大きそうだ。

作業員は年末年始につかの間の休息

「2年前は北海道の北斗市で新幹線の高架橋を造っていました。完成してすぐ山田線の橋梁工事に取り掛かりました」。日焼け顔の作業員が笑いながら語った。鉄建の仕事納めは12月28日。だが、三陸沿岸のいくつかの現場では29日も仕事が続いた。現場の作業員の多くは単身赴任。年末と正月3が日だけは自宅にとんぼ帰りして家族と過ごし、1月4日からまた北風の吹き荒れる現場で黙々と作業をこなす。

「鉄道魂」――。鉄道マンの矜持を表す言葉として使われる言葉だが、その鉄道魂はゼネコンの作業員にもしっかりと根付いている。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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