新潟の「ぶっ飛んだ」列車はこうして生まれた 「同じ列車はダメ」デザイナー・川西氏の哲学

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こうしてアンケートなどではわからないニーズを探し出して整理していく。もちろん町民だけでなく、川西氏らが豊富な経験から見出したニーズも同列に扱って分析しつつ、新しい結崎駅の形を探っている段階だ。そして、こうした方法での駅作りの最大のメリットは、地域の人々に当事者意識が生まれることだという。

「自分の意見が100%聞き入られるわけじゃないけれど痕跡があるなと感じてもらいたい。建築家、デザイナーというとありがたくもない自己主張する人だと思われていましたよね。でも、本来はニーズや条件をきちんと客観的に整理する司会者であり翻訳者でなければならないと思います。それが終わって初めて設計の段階に入れる。一部の人たちが無理やり進めちゃっては民主主義ではないですよ。できあがったときに、『川西ってやつが作った駅だよね』ではなくて、『自分たちがつくった駅だよね』と思ってもらうことが大切だと思います」

他と同じものを持ってきてもダメ

手間や時間はかかるものの、こうしていくことで地域の人々が駅や鉄道に愛着を抱くようになり、結果としてファンを増やし、利用者の増加にもつながっていくというわけだ。鉄道事業者からのトップダウン、一方通行ではなく、地域から声を上げて新しいものを作り上げていく。観光列車にしても駅改良にしても、こうした地域発が苦境に立たされている地方鉄道を救うひとつの方法になるのかもしれない。

「思い切って地域に任せるというのがいいんじゃないかと。鉄道会社だって余裕もなくなってくる。そこで最低限最小限、メンテナンスフリーという言葉の名のもとにFRP素材のどこにでもあるような駅が次々に生まれていく。そのくせ地元の町家風とかいうバカバカしいコンセプトを掲げてね。そういう安直な考え方を駅や列車に対してやっていくと、未来はない。だったら、鉄道会社も自分たちではできないから自由にやってくださいと地域に投げたらいい。地域も土木コンサルみたいなのに丸投げするのではなくて、地元の知恵と技術がある人が主導してやればいいんです」

ただ、これまではこうした取り組みの事例はほとんどない。そのため、情報をまとめて整理し、公開していく力を持った川西氏のようなデザイナーが求められているということだ。

「すごい駅がある、すごい列車がやってくる。それをウチの町や鉄道にも持ってくればよくなるという人がいます。でも、当たっているようで間違っている。参考にするのはいいけれど、同じものを持ってきてはダメ。それぞれの事情にあわせてニーズを探しながら試行錯誤をやっていく。成功しているものはみんな試行錯誤ですから」

地域のニーズをいかに汲み取り、明るい未来をもたらす駅や列車を生み出していく。そして地域の人々が駅や列車のファンになり、当事者意識を持って利用していく。これこそが、鉄道減少時代に光を照らすひとつの道標なのかもしれない。

鼠入 昌史 ライター

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そいり まさし / Masashi Soiri

週刊誌・月刊誌などを中心に野球、歴史、鉄道などのジャンルで活躍中。共著に『特急・急行 トレインマーク図鑑』(双葉社)。

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