(このひとに5つの質問)大坪文雄 松下電器産業社長
2007年度を初年度とする中期経営計画「GP3」を推進する中、CO2排出量を新たな基幹の経営指標にすると表明。収益拡大と環境負荷軽減の両立に向けた意気込みを語った。(『週刊東洋経済』10月20日号より)
生産拡大と省エネ化を矛盾なく進めていく
1 グループ全体の売り上げを伸ばしながらCO2の削減を進めるのは容易ではありませんが、達成のメドについてどう考えているのでしょうか。
われわれは従来から、軽い・薄い・短い・小さいを商品開発のコンセプトにしてきた。このアイデアそのものが、省エネ・省資源化にもなる。今後、よりエネルギー効率や資源効率の向上につながる商品開発に努めることで、生産拡大とエネルギー削減を矛盾なく解決できると思っている。品質や歩留まりなど、多様な方法でブレークダウンした目標があり、(2006年度の排出量398万トンを基準に向こう3年間で)30万トンの削減はできると考える。
2 松下電器の経営の中で、環境の位置づけはどのように変わってきたのですか。
「GP(Global Progress)3」計画(07年度からの3カ年)の立案当初から、環境を経営活動の一つとしてとらえていた。温暖化に対するIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の報告や、グローバルの動きを見ていると、強い環境意識が求められている。GP3の中に環境に関する目標を明確に盛り込まないと、仮に売上高や利益だけを達成しても、グローバルエクセレンスとは呼ばれないだろう。計画は半年しか経過しておらず、従来の取り組みに明確な数値目標を課しても遅くない。
3 多くの企業は(排出量を売上高などで割った)原単位の削減目標を掲げています。あえて総量目標を据えた理由は。
目標を原単位から総量に変えたのは、温暖化対策に対する企業の姿勢。総量をターゲットにすれば必然的に原単位の削減になる。GP3計画はグローバルエクセレンスへの挑戦権獲得が大きな目標で、総量削減を目標にすることが重要だと考えた。
4 最近、中国政府は環境対策で厳しい数値目標を打ち出したようですが、中国での環境問題をどうとらえていますか。
私も中国のいろいろな都市を訪れ、さまざまな情報に接する中で、(中国の環境問題について)その深刻さを実感している。われわれは中国に60近い拠点を有しており、グローバル企業の責任の一環として、少しでも中国の環境向上に貢献していきたい。それができる思想や技術、基盤もあると思っている。
5 松下では排出権獲得の取り組みも進めています。今回の総量削減との兼ね合いは。
総量削減の目標はあくまで自分たちの力で達成するのが大前提。排出権を前提に目標を立案したわけではない。GP3を進める中で、どうしても達成できないことが明確になった場合、目標達成の一つの手段として排出権獲得を考えている。
(書き手:井下健悟 撮影:田所千代美)
おおつぼ・ふみお
1945年、大阪府生まれ。71年に関西大学大学院工学研究科修了、松下電器産業入社。オーディオ事業部長などを経て98年取締役。2000年常務、03年専務、06年6月より現職。
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