2017年の鉄道業界は何が起きるのか? 観光列車人気は続き、廃止した路線の復活も

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2017年はJR東海のリニア中央新幹線・品川―名古屋間の工事がいよいよ本格始動する年でもある。工事自体は南アルプストンネル山梨工区などで起工式が行なわれているが、2027年の営業開始に向け、本格的な掘削作業が始まるのはこれからだ。

リニア中央新幹線の営業車両「L0系」(記者撮影)

総事業費は5.5兆円のうち、2016~2017年度に1.5兆円ずつ、計3兆円が低金利の財政投融資で調達されることが決まっている。JR東海は元々、事業費の全額を民間から調達する計画にしており、名古屋開業後は8年程度かけて債務をある程度返済してから、あらためて大阪延伸の事業費を調達する方針だった。しかし、リニアの経済効果をフルに発揮するには名古屋開業から間髪入れずに大阪開業に向けた工事を開始すべきという声が大阪の経済界や政府・自民党の間で高まり、公的資金がつぎ込まれることになった。

課題は人手不足

資金需要が本格的に増えるのはまだ先の話で、しばらくは利払いだけが続く格好だが、「金利が安いうちに借り入れるのでメリットは大きい」(JR東海)という。計画策定時点よりも金利は下がっているので、資材価格が上がっても金利負担減で多少は吸収できるだろう。

問題なのは建設業界の人手不足だ。2016年11月1日に起工式を迎えた南アルプストンネル長野工区は地表からの深さが最大で1400mある最難関区間。湧水や岩盤崩れなどの想定外のリスクも懸念される。工事完了は2026年11月末。その後は試験運転の期間もある程度必要であり、工事が少しでも遅れたら2027年の開業が危ぶまれかねない。その意味では今後のスケジュールを占う重要な1年となりそうだ。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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