JRが「成田エクスプレス」をテコ入れする狙い 通勤利用狙い「お得なきっぷ」も発売

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仮にN’EXの東武線直通が実現すれば、成田空港と東武線沿線の「蔵の町」栃木・日光エリアの間のアクセスが向上する。JRが東武線直通特急に使用している253系1000番台はN’EXの「お下がり」であり、数年のうちに車齢が30年に到達する。更新時期を見据えて、今からE259系車両への対応を準備しておいて損はない。

上記よりもハードルが高い私案としては、御殿場線直通運転と、箱根登山鉄道線直通運転を挙げたい。成田空港と「富士山のまち」御殿場または箱根の間のアクセス向上によって訪日外国人の利用増加を期待できる。ただし、箱根登山鉄道線直通運転実現には、東海道本線・箱根登山鉄道線の間での渡り線設置が必要である。

他方、静岡県内の鉄道とまちづくりに詳しい都市計画技術者の美濃部雄人静岡市副市長は、「『御殿場プレミアムアウトレット』付近への御殿場線新駅設置で、同線とアウトレットへの誘客が期待できる」と語る。この新駅が実現すれば、N’EXの御殿場線直通列車の価値はさらに高まると筆者は考える。

また、「強み」を磨き上げるさらなる方策として、大宮駅発着のN’EXの浦和駅停車を提案したい。現状では、浦和駅―成田空港間の直行バスがないため、鉄道の直行ニーズを掘り起こせるともに、着席ニーズに応えることで顧客満足度向上を実現できる可能性を秘めている。

「観光立国」のインフラとして活性化を

外国人にとってN’EXは、「JAPAN RAIL PASS」や「JR EAST PASS」などで利用可能なため、訪日外国人のJR東日本線の利用を促す上で重要な列車である。「東京都心・周辺都市・観光地の主要駅―成田空港駅間を定時運行で直結する利便性」を提供している列車として、観光立国政策推進に向けたインフラとしての役割も担っている。JR東日本および接続する他社の路線ネットワークを十二分に活用することで、N’EXのポテンシャルはさらに高まるはずである。

また、N’EXへの自由席設定や「おトクなきっぷ」の利便性向上策を実施することで通勤利用をさらに獲得したいところである。大胆なアイデアの企画・実行によるN’EXの活性化を期待したい。

大塚 良治 江戸川大学准教授

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おおつか りょうじ / Ryouji Ohtsuka

1974年生まれ。博士(経営学)。総合旅行業務取扱管理者試験、運行管理者試験(旅客)(貨物)、インバウンド実務主任者認定試験合格。広島国際大学講師等を経て現職。明治大学兼任講師、および東京成徳大学非常勤講師を兼務。特定非営利活動法人四日市の交通と街づくりを考える会創設メンバーとして、近鉄(現・四日市あすなろう鉄道)内部・ 八王子線の存続案の策定と行政への意見書提出を経験し、現在は専務理事。著書に『「通勤ライナー」 はなぜ乗客にも鉄道会社にも得なのか』(東京堂出版)。

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