北陸新幹線「小浜・京都」案は本当に最善か 工事や建設費で他ルート再浮上の可能性は?

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難工事の末に開通した青函トンネルと北海道新幹線(写真:T2 / PIXTA)

だが、東海道新幹線の代替新幹線ネットワークという位置付けを固持するのであれば、北アルプスルートを押し切っていたとしても荒唐無稽とは言えない。東海道線の丹那トンネル、北海道新幹線・海峡線の青函トンネル、北越急行ほくほく線の鍋立山(なべたちやま)トンネルと、難工事として歴史に名を残すトンネルはいずれも困難を承知で掘削されてきたからだ。現在のルートは建設の難易度が北アルプスルートに比べれば低く、しかも沿線には都市が連なっているため、約80キロメートルもの遠回りを上回る利点が生じると見なされたのであろう。

ところで、長々と北陸新幹線の遠回りの具合を述べてきたのは理由がある。今回議論されている敦賀-新大阪間の3ルートは、いずれも両駅間の最短ルートではないからだ。

敦賀駅から新大阪駅まで地図上で直線を引くと、滋賀県高島市や京都市の西方、大阪府高槻市の北方、同茨木市や同吹田市のほぼ中央を通る約114キロメートルが最も短いルートとなる。京都駅を通らなければ意味がないというのであれば、このルートをやや東にずらせばよい。具体的には敦賀-京都間が約79キロメートル、京都・新大阪間は東海道新幹線と並行するとして39.0キロメートルの計約118キロメートルとなる。

いま挙げた最短ルートは初期の段階で湖西ルートと呼ばれていたものに近い。要は在来線のJR西日本湖西線に沿うルートだ。しかし、湖西ルートは強風に見舞われるケースが多いといった理由により、早い段階で候補から外された。路線の主体がトンネル区間となるであろうという点、またトンネル以外の区間はリニア中央新幹線のようなシェルターの設置といった対策が考えられるにもかかわらずである。

実際にどのルートになってもおかしくはない

とはいえ、ほぼ確定した小浜・京都ルートについては、原子力発電所を建設した見返りという観点から福井県小浜市を通るという事情も理にかなっているし、少々の遠回りくらい大目に見るべしという意見も正しい。そもそも、この区間の営業主体となるJR西日本が小浜・京都ルートを推していることからも、ルート議論をいまさら蒸し返す必要はもはや存在しないであろう。

しかし、建設費の財源に困窮となれば米原ルートが再浮上の可能性もある。また、2016年11月1日現在で人口8万2333人を抱える舞鶴市を経由することに価値を見いだしたり、小浜-京都間を貫くトンネル掘削に難儀したりするようであれば、小浜・舞鶴・京都ルートの可能性もないとはいえないであろう。何にせよ、最終的にどのルートで開業を果たしても意外でもないし、驚くこともないのだ。

梅原 淳 鉄道ジャーナリスト

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うめはら じゅん / Jun Umehara

1965年生まれ。三井銀行(現・三井住友銀行)、月刊『鉄道ファン』編集部などを経て、2000年に独立。著書多数。

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