副都心線の開通で激化 池袋・新宿で過熱 新・百貨店戦争

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商圏拡大を狙う新宿 エリア内競争も激化

一方、新線開通による商圏拡大に意欲を見せるのが新宿。高島屋新宿店では今春に外商部門を約20人増員し、新規顧客開拓に向けたチームを組んだ。練馬区、板橋区、豊島区、北区など、これまで顧客の取り込みが手薄だった東京23区の北部エリアを強化する。「特に練馬と板橋は、新宿から近距離にありながらも、アクセスが不便だったため、重要商圏とは認識していなかった」(高島屋新宿店竹下守店長)。

高島屋の新宿店は07年4月に130億円を投じて全館を改装済み。リニューアル1年目は目標売上高に約50億円届かなかったが、08年度は新線効果も見込んで、約15%増の820億円を計画している。また、新設した地下食品フロアの入り口は、副都心線が通過する新宿三丁目駅と通路で直結することから、「都内で最も雨に弱い百貨店」との汚名返上を期す。食品フロアの新たな入り口からの来店客数は1日1万人を見込み、うち約1割は新たな商圏からの来客と試算している。

さらに新宿三丁目駅は東京メトロ「丸ノ内線」との乗り換え駅でもある。同線の大手町駅や銀座駅から仕事帰りの女性が、夕飯の買い物に立ち寄れるよう、食品フロア入り口近くにはスーパーの紀ノ国屋や生鮮売り場を配置した。改装以降、食品売り場は計画を上回る売れ行きで、今後はいかに上層階への買い回りを促せるかが課題になる。高島屋は現在、新宿地区の百貨店では売り上げ第4位。「新宿エリアでは今後、立地よりもサービスでの競い合いになる。サービスと店内環境には自信がある」(竹下店長)と、新線開通を好機ととらえて挽回をもくろむ。

ただ、関係者の間では、「副都心線の開通で最も恩恵を受けるのは、やっぱり伊勢丹(新宿本店)」との声も多い。収益柱の婦人服売り場は当初の予定を半年先送りし、秋にリモデルが実施されるが、新宿三丁目ホームは伊勢丹の真下に位置する。三越伊勢丹ホールディングスの赤松憲常務は、「副都心線はプラスアルファにすぎない。(来店客数が増えるだけでなく)新たな顧客のニーズに応えて初めて新線効果と言える」と余裕の構えだ。

新線開通で商圏拡大が期待されるとはいえ、百貨店業界の売り上げは前年割れが続く。激しい顧客争奪戦の末、果実をものにできる百貨店はほんの一握りだろう。

(堀越千代、田邉佳介 撮影:今 祥雄 =週刊東洋経済)

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