マイクロソフトを脅かす「セールスフォース」の素顔
「1%の利益、1%の株式 1%の時間を地域社会に」
セールスフォースを率いるのが今年43歳のマーク・ベニオフ。大胆な物言いで「ソフトウエアは死んだ」と斬って捨て、SAP会長との対談前の会見では、「ここ(コンピュータ歴史博物館)にエンド・オブ・(ライセンス型)ソフトウエアというブースができるだろう」と挑発した。
同社は1999年にサンフランシスコのベニオフのアパートで産声を上げた。それまでのベニオフの経歴は華々しいものだ。高校時代に友人とシリコンバレーでゲームソフト会社を立ち上げ、10タイトルを発売。大学時代にはマッキントッシュのアセンブリー言語開発者として雇われた経験を持つ。その後、オラクルに13年在籍。同社の営業担当幹部を務めていた。セールスフォースを創業した当初から「世界規模の会社を作りたかった」と言う。
ユニークなのは、その経営手法だ。ベニオフのモットーは「1%の利益、1%の株式、1%の時間を地域社会に」というもの。セールスフォースでは、社員に積極的な社会貢献を推奨している。それは、日本法人も同じだ。「毎年2回ボランティアウィークがあり、そのときにNPOと協力し、日本の絵本にタイ語、ベトナム語などのシールを貼って、アジアの子どもたちにプレゼントする活動を行っている。もちろん社長の私も参加している」と日本法人社長の宇陀栄次は胸を張る。
また、地域社会への還元を目的に設立された「セールスフォース基金」には、これまで1200万ドル以上が寄付された。これらすべては、「地域のリーダーにならなければ、企業のリーダーにはなれない」というベニオフの信念から発している。
そのベニオフの世界市場戦略は、「市場としてはまずアメリカ1番。日本が2番、欧州が3番、そしてアジアが4番目」。次なる照準を日本に定め、4月には恵比寿から六本木ヒルズに日本法人本社を移転した。米国の景気後退を乗り切るためにも、日本で収益を確保することが至上命題。「携帯電話を多用する日本の顧客には特殊な技術が必要で、ラップトップを多用するアメリカとは違った仕事の仕方をする」(宇陀社長)。それを念頭に日本向けにシステムを再構築したという。
日本でのユーザーは日本郵政のほか、三菱UFJ信託銀行、キヤノン、小田急電鉄、日立ソフトウェアエンジニアリング、NTTデータ・セキュリティ、みずほ情報総研、富士通ミドルウェア、ニフティ、損害保険ジャパン等々。着実に日本市場に浸透しており、宇陀は「(日本法人の)上場も視野」と順調ぶりを明かす。ベニオフはオラクル時代に日本オラクルの上場成功を目の当たりにしており、子会社上場に理解を示しているようだ。