がんの人に「調子はどう」と聞いてはいけない 気にかけて発したつもりでも…

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「自分の人生がもうすぐ終わるかもしれない、あるいは終わらなくても、劇的に変わるかもしれない――そんなときに、見当外れの楽観論を言われると、患者は自分の体で起きていることが大したことではないと言われた気がする。人が無神経な言動をとるのは、優しさが欠けているからではなく、何が本当に助けになるか知らないからであることが多い」。

「お手伝いできることがあったら」は責任転嫁

ゴールドバーグと、彼がカウセンリングした人たちが一番嬉しかったのは、言葉ではなく行動だった。「お手伝いできることがあったら、なんでも言ってください」という言葉は、患者側のイニシアチブを求めることになるからダメ。そうではなく、「今週ご家族に夕食を持っていきます。何曜日がご都合いいですか?」と「手伝い」の具体的な内容を提案するほうがいい。

もともとなんでも1人でやってしまいがちで、助けを求めることが苦手なゴールドバーグは、このことを息子に教えてもらった。「手術後に息子がうちに来てくれて、『親父、その箱を置いて。僕がやるよ』と言ってくれた」。

内科医のウェンディ・スクレセル・ハーファムは、20年以上にわたりがんと戦っている。そんな彼女も、具体的な手伝いを申し出ることが大きな助けになると語る。たとえば食料品の買い出しや、子供の世話、犬の散歩、病院への付き添いを申し出ること。もちろん実際にそれを実行に移すことも重要だ。

最近は、ケアリングブリッジ(caringbridge.org)などのウェブサイトで病気になった人が家族や友達に近況を伝えたり、ミールトレイン(mealtrain.com)やロッタヘルピングハンズ(lotsahelpinghands.com)で具体的な手伝いを「募集」することができる。

いつのまにか「調子はどう?」という質問をされるのが怖くなったと、ハーファムは言う。「相手の意図はどうあれ、『調子はどう?』と聞かれると、自分の弱さに意識が向いてしまう。だから適当な返事をしながら、自分の中で広がる悲しみや恐怖と戦っていた。たとえ経過がよくても、心配してくれる人全員に知らせるエネルギーがなかった」。

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