【産業天気図・非鉄金属】非鉄市況が軒並み下落。つれて、各社の業績もピークアウトで「曇り」模様

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   08年4~9月  08年10月~09年3月

非鉄金属業界が市況の高騰に沸いたのは、すでに過去の話となりつつある。2008年度に入って、非鉄相場は軒並み下落基調。それにつれて、非鉄各社の業績も総じてピークアウトとなる見込みで、2008年は前後半とも「曇り」模様となりそうだ。

ただ、ピークアウトの度合いは、各社が取り扱う金属の種類によって状況が異なる。たとえば、ニッケル。最大用途のステンレス業界で需要低迷が続いていることを背景に、今年5月には1年前のピーク時の半値以下となる2万2000ドル台(1トン当たり、LME)まで下落した。国内で唯一の電気ニッケルメーカーである住友金属鉱山<5405>の今期前提価格は約2万6400ドルで、足元の価格は会社想定を下回る格好だ。また、亜鉛も足元の価格が1トン当たり2000ドルを割り込む水準。中国・四川大地震の影響で供給懸念が心配されたものの影響が軽微だったことに加え、欧米での自動車向け需要が低迷していることなどを背景に、三井金属(2400ドル)、東邦亜鉛<5707>(2200ドル)など主要各社の想定価格を大幅に下回っており、下方修正が懸念される。

一方、銅市況は、米国での自動車・住宅需要の低迷があるものの、銅鉱石の品位低下などの影響から、1トン当たり8000ドル前後と歴史的な高値圏を維持している。ただ、こちらは資源メジャーの寡占化が進んだことによる、日本の製錬メーカーの鉱石購入条件悪化が水を差す形。08年分の価格交渉は、製錬側の加工賃が前年比25%減で決着下のに加え、慣例とされてきたプライス・パーティシペーション制度(相場変動に伴う利ザヤ分配制度)が廃止され、市況高の恩恵も享受できない状況だ。

製錬事業の旨みが薄れてきた状況下、各社は非製錬部門の強化に注力している。これまでは資源・金属部門の投資が目立ってきた住友金属鉱山も、電子材料部門の組織改変に着手。新製法による液晶用実装部品の海外生産開始など、強化に本腰を入れ始めた。また、かねてより他部門の比重を高めてきた三菱マテリアル<5711>は、建設需要拡大が見込める米国西部の生コン会社を子会社化するなど、非製錬シフトを一層加速させている。市況軟化と資源寡占化という周辺環境の変化に伴い、日本の非鉄各社の業態は確実に変化している。

【猪澤 顕明記者】

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