紳士服専門店が「オーダー」を強化する理由 5万円以上のスーツを若者が一点買い
ビジネスカジュアルが定着したことで逆にオフィスでの服装への関心が高まり、それがオーダースーツ市場拡大の要因となったとも言われる。コナカでは既存のオーダー店も順次新業態に切り替え、今後2~3年で50店舗まで拡大させる計画だ。
業界首位の青山商事は一足先に2016年2月から、「ユニバーサルランゲージ メジャーズ」の店名でスーツやシャツのオーダーを開始している。現在は既存業態を含めた計13店舗でオーダースーツを展開。今年2~8月までの受注に比べ、9月以降はすでに3.5倍の受注を獲得した。
縫製は中国の海外工場をメインに一部の国内工場を組み合わせる。発注から完成までは約30日を要するが、「スケールメリットを活かすことで国産以上の品質を実現できる」(同社)という。
「自分だけの一着」で価格競争を回避
各社がオーダースーツを強化するのは、既成スーツの売り上げが伸び悩んでいることがある。紳士服業界は団塊の世代の退職が進み、限られた顧客を奪い合う構図が続く。AOKIホールディングスの2016年4~9月期は、「改装セール」と銘打った値下げを続けることで利益率が悪化し、部門利益は大幅な赤字に陥った。
オーダースーツ場合、5万~6万円が中心価格帯になる。“自分だけでの一着”であるオーダースーツなら、価格競争とは一線を画することができる。「20代~30代前半の若年層からの注文が多い」(青山商事)ことも特徴だ。紳士服専門店は就活スーツには強いが、その後若年層を囲い込めていない現実がある。オーダースーツはその若年層が再び店に足を運ぶきっかけになる。
ITの活用も大きい。店に熟練のテーラーがいなくてもさまざまなスタイルを提案できるようになり、オーダースーツへのハードルが低くなった。店内在庫がなくても展開でき、売り場効率が高いため、店側としてのメリットも大きいのだ。
紳士服専門店は浮上できるか。オーダースーツへの取り組みが一つの試金石となりそうだ。
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